哀愁

●349 哀愁 1940

 1939年9月3日イギリスがドイツへ宣戦布告した日、ロイ大佐はフランスへ赴任する前にウォータールー橋へ立ち寄り、昔を回想する。

 第一次世界大戦時、ロイはこの橋で空襲警報を聞く。そこで彼は踊り子マイラと出会い一緒に地下鉄へ避難する。会話をした二人は、ロイが明日フランスへ赴くこと、マイラが今日劇場で踊ることを話すが、ロイは大佐と食事を約束をしているため劇場にいけないと答える。警報が解除され二人は別れるが、マイラはロイにお守りの人形を渡す。

 劇場で踊るマイラ、そこへロイが現れる。舞台が終わったマイラにロイは手紙を書くがそれをマダムに見つかり、マイラは断りの手紙を書かせられることに。ロイはその手紙を見て失意するが、マイラの友人キティが仲介し二人はデートすることに。二人は店で食事をしダンスを踊りそしてキスをする。ロイはマイラを家まで送るが、もう会えないと話す別れる。

 翌日雨の中マイラの家の外にロイが現れる。喜んで会いに行くマイラ。ロイはフランス行きが2日間延期になったと話し、結婚しようと言いだしマイラを連れて行く。大尉であるロイが結婚するためには上官の許可が必要だったため上官に会いに行くが、連隊長の許可を取れと言われる。ロイは叔父である連隊長に会いに行き許可を取る。二人は教会へ式をあげに行くが午後3時以降は結婚式はできないと断られ明日来るように言われる。

 マイラは式のための服を買って家に帰る。キティに明日結婚することを報告、キティも祝福する。仲間にも報告し祝福されるがその時マイラに電話があり、ロイが25分後の列車で赴任すると連絡が入る。マイラは舞台を蹴ってロイを見送りに駅に行くがほとんど会えずにロイは行ってしまう。

 劇場に戻ったマイラだったが、マダムに首を宣告される。キティはマイラをかばいマダムに抗議するがキティも一緒に首になってしまう。仕事を失った二人は困窮する。そこへロイから花束が届き、ロイの母親がマイラに会いに来るとの手紙も入っていた。

 マイラはロイの母親に会いに喫茶室へ行く。時間になっても母親は現れない。従業員がマイラに夕刊を渡すとそこにはロイの戦死報告が掲載されていた。気絶するマイラ。息を吹き返したマイラの元へ母親がやって来る。マイラは新聞を見られないようにするが、母親との会話がちぐはぐになり、母親は帰ってしまう。

 マイラは病気になる。ある日夜遅く帰って来たキティはマイラがいないことに気づき騒ぐがそこへマイラが帰って来る。そしてキティの仕事場だという劇場へ行ったがいなかったと話し何をしてお金を稼いでいるのかと尋ねる。キティは男も仕事もない女はこうするしかなかったと話す。マイラも娼婦になって生活をして行くことに。

 月日が流れいつも通りマイラとキティは駅で戦争帰りの軍人達を待っていた。そこへロイが現れマイラと再会する。お茶をしながら話をする二人、ロイは母親とマイラを会わせようとするがマイラはロイとは結婚できないと話すがロイは認めなかった。マイラは家に帰りキティに全てを告白する。キティはマイラを応援する。

 マイラはロイの実家へ。マイラを紹介するため知人達を招いたパーティが開かれる。そこでマイラは連隊長の叔父を紹介され会話をする。叔父は制服に着いた連隊記章を見せこれをマイラは汚しはしないと見抜いたと話す。

 夜マイラはロイの母親に全てを打ち明け明日家を出て行くが、ロイには何も離さないでほしいと頼む。そして手紙を置いて去って行く。手紙を見たロイはマイラを探し始める。家に行きキティに事情を話し一緒に探すことに。キティの探す店の様子を見てロイは全てを理解し、マイラはもう見つからないだろうと話す。マイラはウォータールー橋にいた。そして走って来る軍用トラックに飛び込み自殺してしまう。道にはあのお守りの人形が落ちていた。

 1939年、ロイ大佐はお守り人形を手にウォータールー橋に立っていたのだった。

 

 これまた有名な作品だが、今回が初見。古典とはいえ見事なメロドラマ。先日観た「ライフ・イズ・ビューティフル」と同様、戦争が招いた悲劇がテーマ。

 偶然の出会いから一気に結婚まで行ってしまう2日間を描く前半。男が戦争に行ってしまいすぐに戦死の報告を新聞で知り落ちていく中盤。そして男が無事戻って来るが女は昔の自分ではないことを恥じる終盤。教科書のようなシナリオ。

 原題は二人が出会った橋の名前そのものだが、これを「哀愁」とした邦題も良い。漢字二文字タイトルに間違いはない、やっぱり。

 それにしてもビビアン・リーの美しさ。この映画は必要以上にセリフでの説明をしないのとビビアンのアップのシーンが多いのだが、彼女の顔の表情だけでの演技がセリフを不要としていると言っても良い。雨の中のロイを見つけた時のはしゃぎぶり、後半真実を隠しながらロイの実家で過ごすシーン、そして真実を明かすことを決意するシーン、ラストの橋の上での喪失感。どれも見事。ただの美人ではない。

 しかしこんな悲しい「蛍の光」は聞いたことがない。今後、街中や店で聞いて、泣きそうになったらどうしよう(笑

 

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