カラット探偵事務所の事件簿1 乾くるみ

●カラット探偵事務所の事件簿1 乾くるみ

 カラット探偵事務所の探偵古谷と助手井上が関わった事件の記録の形をとる推理小説短編集。

 

 「卵消失事件」

 夫の浮気調査の依頼。夫が奇妙な行動をとり始めたという。浮気相手と思われる女とのメールのログから古谷が真相を解き明かす。ポイントは「達川」(笑

 

 「三本の矢」

 屋敷に打ち込まれた弓道の矢について調査を求められる。屋敷に行き現場を調査、家族から聴取し、真相が明かされる。ポイントは「家にあった弓道の矢とゴルフクラブ

 

 「猫の暗号」

 青年が持ち込んだ3首の和歌の謎を解き、宝を探して欲しいと依頼される。古谷は屋敷に行き宝のありかを指摘する。ポイントは「家の見取り図と魔法陣」

 

 「別荘写真事件」

 行方不明だった父の知り合いから送られて来た写真を元に写真に映った猫を探すことを依頼される。古谷たちは軽井沢、そしてオーストラリアへ行くことに。ポイントは「写真に映った月の映像」

 

 「怪文書事件」

 団地で3通の怪文書がばら撒かれる。自治会の役員が次の投稿を阻止して欲しいと依頼してくる。団地に行った古谷は文書でターゲットにされた家庭を訪れる。そこで意外な真相が明かされる。ポイントは「ABCパターン」

 

 「三つの時計」

 古谷井上が高校の同級生の結婚披露宴に招待される。その場で新婦の父親から、新郎が初めて家に来た時の謎について相談される。ポイントは「ケーキと数字のないアナログ時計」

 

 裏表紙に「イニシエーション・ラブ」〜で大反響を巻き起こし」とあったが、その本は読んでいないし、全く知りもしなかった(笑 この本を知ったきっかけは「おけら長屋」の本に挟まれていた出版社のチラシから。

 第1話の「卵消失事件」の真相を読んだ時、当然のことながらページを遡ってしまった。メールのログを丁寧に読み返し大笑いしてしまった。よくこんなことを考えついて〜考えつくだけならできるかもしれないが〜しかもそれを作品に仕上げたなぁ、と。ネタバレを書くつもりはないが、こんなトリック?を使って2話目以降はどんな話を持ってくるのだろうと思って読み進めたが、推理小説好きにはたまらない展開となる作品が多く大満足。

 「なるほど」と唸る作品もあれば、「だろうなぁ」と思った作品もあったが、唸った作品のレベルが高いのでポイントは高い。特に「ABCパターン」と称した〜おそらく「ABC殺人事件」のこと〜この手の犯罪における犯人が何番目の被害者の関係者であるか、という論法は見事だった。犯人の側の心理からすればそりゃそうなるよね、という感じ。

 しかしこの本の最大のトリックは最後の1ページで明かされる。第1話がそうであったように、最後の1ページを読んだら、関係する箇所を読み直さずにはいられない。これは素晴らしい。最後の最後でここまで驚いたのは久しぶり。

 これはしばらく「乾くるみ」さんの小説を読むしかないよなぁ。