男はつらいよ 紅の花

●353 男はつらいよ 紅の花 1995

 オープニング。とある駅にいる寅さん。駅員を兼ねた夫婦が新聞を読んでいる。尋ね人の欄には寅さんの名前があった。

 さくらがとらやにやってくる。おいちゃんとおばちゃんは新聞の尋ね人にもう一度寅さんの広告を出すかどうかでもめている。TVでは阪神大震災の番組が放送されていたが、そこにボランティアとして活躍する寅さんの姿が映し出され、とらやの皆は驚く。

 その時店に寅さんを訪ねて客がやってくる。その客は神戸で被災したパン屋の主人で寅さんに世話になったと話す。しかし寅さんはそこでも女性に惚れ振られ神戸の街を去っていたのだった。

 その夜さくらは博と満男の女性問題のことで話をする。さくらは未だに満男は泉のことが忘れられないのだと話す。その泉が新幹線で東京駅に降り立つ。そして満男の勤める会社(靴屋)を訪ねてくる。その日の夜、泉は満男の家に訪れ夕食を共にする。食後、泉は満男を誘って外出、レストランで見合いをし結婚をするかもしれないと話すが、満男は泉を祝福するだけだった。

 翌日さくらに送られて泉は柴又の駅へ。さくらは満男は振られちゃったのねと話す。泉は地元に戻り、母親と結婚式の衣装合わせをする。満男はいつも通り働いていたが、夜はやけ酒を飲んでいた。

 寅さんが鹿児島からとらやに電話をしてくる。それを聞いたさくらは一安心するが、満男が一昨日の晩からいなくなったととらやで話す。博は満男の会社に謝りに行く。

 岡山県津山で泉の結婚式が行われる日となる。白無垢に着替えた泉は夫となる人の家で記念撮影をし式場に車で向かう。土地の風習で花嫁を乗せた車は決してバックをしてはいけない、と世話役が話す。泉の乗った車の前に逆方向に向いた車が停車する。世話役は理由を話し、その車をバックさせようとするが、車は泉の乗った車に突っ込んできて泉の乗った車はバックしてしまう。運転していたのは満男だった。これにより結婚式は中止となる。

 その夜泉の母親がさくらに電話をしてきて満男の行為を詰る。しかしさくらは事情がわからなかった。泉は母親を置いて名古屋へ帰ることに。

 奄美大島の船に乗る満男。その船にはリリーもいたが満男だとは気づいていない。満男が自殺しそうに見えたリリーは満男に声をかけ家に連れて帰る。そこには寅さんがいた。再会を喜ぶ3人。その夜3人は昔話をし、満男も家に泊まることに。翌日から満男は帰りの飛行機代を稼ぐために仕事をすることにし、さくらに連絡をする。

 泉がとらやを訪ねてくる。そこで泉は博と話すことに。

 満男は寅さんとリリーに泉の結婚式のことを話す。寅さんは満男のやったことを責め、耐えるべきだったと言うが、リリーはそれは女から見れば滑稽だと話す。

 島に泉がやってくる。満男のいる海岸へ寅さんとリリーは泉を案内する。泉は満男にどうしてあんなことをしたの!と問い、満男は愛してるからだ、と答える。

 とらやへ寅さん、リリーが帰ってくる。街中大騒ぎ。夜とらやの茶の間でいつもの団欒が行われ、3ヶ月の奄美大島での生活が語られる。リリーが疲れて2階に上がった後、さくら達は寅さんにリリーとのことを聞こうとするが、そこへ泉を名古屋に送ってきた満男が帰ってくる。翌日リリーは施設にいる母親に会いに行く。

 泉と満男は週末デートの約束をする。家に戻った満男にさくらは寅さんとリリーのことを尋ねるが、満男はコメントをさし控えると答える。

 さくらはリリーにとらやに呼び出される。リリーは奄美大島に帰ることに。しかしリリーは寅さんと喧嘩をしてしまっていた。さくらは寅さんを説得しようとするが寅さんは聞かなかった。リリーはタクシーに乗り帰ろうとする。そこへ寅さんが現れ送って行くよと話す。そしてタクシーに一緒に乗り込む。タクシーの中でリリーはどこまで送ってくれるのと聞き、寅さんは女を送ると言ったらその女の家の玄関までだよと答える。

 正月、さくらの家に名古屋の泉が電話をしてくる。泉は満男と一緒だった。博はリリーに年賀状を書いていた。さくらはリリーからの手紙を読んでいた。口喧嘩をしたため寅さんは出ていってしまったと書かれていた。

 神戸の被災地、あのパン屋の元に寅さんはいた。

 

 今月50作目がTV放送される、と言うことでおさらいの意味を込めて48作を鑑賞。

 男はつらいよはどの作品も複数回観ているが、この48作は渥美清さんの遺作ということもあり、そんなに観ていない。今回観たのも相当久しぶりだった。そのためか、いくつかの点で驚いてしまった。

 奄美の船の船長が田中邦衛さん。ラストの被災地でパン屋の夫婦の後ろでちょっとだけ映る芦屋雁之助さん。こんな二人が出ていたのは全く記憶になかった。

 さらに泉が満男に言いよる海岸のシーン。記憶の中ではこれがラストのシーンだと思っていたが、実際にはまだ残り40分ほどあるところでのシーン。見直してみればわかるが、当然のことながら、この後に寅さんとリリーがとらやに訪れるシーンが待っているのだった。

 全体を通してやはり渥美さんの体調の悪さが感じられる映画だと言わざるを得ない。しかしラストのとらやの茶の間での団欒シーン。とらやの面々の茶々が入る中、寅さんがしっかりと沖縄民謡の解説をする。他の場面では声が弱々しく感じられたが、このシーンではしっかりとアリアを聞くことができたように思う。

 泉と満男、寅さんとリリー。この2組がしっかりとこの48作で結ばれたように思える。山田監督が最後の1本であることを覚悟して作った最後の寅さんだった。

 

 

 蛇足

 全く関係ないが、Amazonプライムで「また来てマチ子の、恋はもうたくさんよ」というドラマを見終わった。昭和の下町を意識したドラマ、というのが売りで、主人公の女の子の格好がどことなく寅さんを思わせるものだったので見たのだが、その最終回、メロンパンがきっかけでドラマの登場人物たちが言い争いを始める。それが、あの寅さんの有名なメロン騒動のセリフをそのままにしゃべるというもの。

 もともとこのドラマの売りは少し変わっていて、2話3話と見続けていかないとその本当の面白さがわからない作りになっていて、よくこんなものを民放のドラマとして作ったなぁと思っていたのだが、最終回にこんな仕掛けを持ってくるとは。ただでさえ、主人公の女の子がアイドルグループの一員で、男はつらいよとの関係性は皆無だろうに。

 48作を観た翌日に、全く関係のないところで、あのメロン騒動のセリフを聞いて嬉しくなってしまったので(笑