きょうも涙の日が落ちる 渥美清

●きょうも涙の日が落ちる 渥美清

 渥美清さんが書いた一冊。渥美さんが著者とされる本は2冊しかないので貴重な一冊。エッセイが3分の1、残りは対談。1970年から数年間の間に発表されたものをまとめているらしい。

 

 若い頃に行ったアフリカ旅行の話が多く語られる。今から50年ほど前の文章ということもあるのかもしれないが、渥美さんの人柄が正直に出ている。4回も行ったのにアフリカは臭くて暑くて嫌だ、と書いている(笑 ならば行かなけれないいのに、と思うが、それでもしばらくするとまた行きたくなる、らしい。

 対談が行われたのが、渥美さんが結婚する前の時期のものが多く、多くの対談相手が、結婚について尋ねている。それに渥美さんが色々と言い訳のようなことを話している。母親のことだったり、周りで先に結婚した人の言葉だったり。いかにも昭和的な文章だと思える。

 寅さんについても少しだけ語られる。まだまだシリーズが続いている最中の時期なのだが、いつまで続くのか聞かれた渥美さんが、山田監督次第でしょう、と答えたり、だんだんと自分と寅さんのイメージが重なっていると思われることが多くなったことも語られる。

 森繁さんや淀川さんとの対談も今となれば貴重。森繁さんが男はつらいよにゲスト出演した理由が語られていたり、淀川さんが寅さんはいつも劇場で見るの、と言っていたり。

 若い頃の渥美さんのことがちょっとだけわかる良い本だった。