名探偵に乾杯 西村京太郎

●名探偵に乾杯 西村京太郎

 ポアロが最後の事件「カーテン」で亡くなったことを受け、明智がエラリークイーン、メグレ、ヘイスティングズ明智の所有する孤島に呼んで追悼の会を開くことになった。そこへポワロの2世を名乗る青年が現れ、さらに悪天候から何人かの日本人も現れることに。

 孤島の明智の別荘でイタコにポワロの霊を呼び寄せてもらうことになるが、その場で殺人事件が発生、その後も第2、第3の殺人が起きる。ポワロ2世が事件を解こうとするが失敗を繰り返す。明智の助手小林が気を揉む中、事件は意外な終盤を迎える。

 

 前作「名探偵も楽じゃない」に続くシリーズ第4作にして最終作。展開としては前作同様、クローズドサークル(脱出や外部への連絡が取れない孤島)での連続殺人となる。さらに名探偵たちが事件に取り組む姿勢をあまり見せず、若いパワロ2世に探偵役を任せるという点も前作と全く同じで、展開としてはあまり面白くない。もっと言えば、連続殺人事件のトリックも前作同様、卑怯な手口であるため、ミステリーとしてはがっかりさせられる。

 ただ当たり前だが、最後の解決は名探偵たちによって行われ、さらにポワロが2世に残したという探偵論に隠された秘密が明かされる。これが衝撃的な秘密であり、西村京太郎がアガサクリスティに挑戦しているかのような謎であり、連続殺人事件よりもこちらがメインだと感じられる。

 前作でも書いたが、第1作第2作が非常に面白かったのに比べると、第3作本作は一段下という感じがする。これでシリーズが終わってしまったのは、ポワロが死んでしまったこと以上に、西村京太郎が名探偵たちを使ってこれ以上面白い作品が書けなかった、ということなんだろうなぁ。