足ながおじさん

●360 足ながおじさん 1955

 ペンドルトンは34もの会社を持つ富豪で音楽好きだった。彼はフランスへの経済使節団に同行してパリへ行く。途中乗っていた車が溝に落ちてしまう事故が起き、電話を借りるためにそばにあった孤児院を訪れる。そこで孤児たちの面倒を見ている18歳の娘ジュリーを見かけ、その才能に惚れ込む。大使館に着いたペンドルトンは大使にジュリーを養子にしたいと言い出すが、大使は反対する。仕方なくペルドルトンは匿名でジュリーに支援援助をし、自分が多額の寄付をしているアメリカの大学に行かせることに。

 知らせを受けたジュリーは大喜びする。支援の条件は、月に一度匿名の支援者に手紙を書くことだった。その夜ジュリーと孤児たちは見慣れぬ車が孤児院に来ているのを目撃する。ジュリーはそこにいた背の高く足の長い男性を支援者だと考え、足ながおじさんと呼ぶことに。

 アメリカに着いたジュリーは大学の寮へ入る。先輩たちに部屋へ案内されるとそこに足ながおじさんから大量の洋服が届く。早速ジュリーは足ながおじさんに手紙を書くが、ペンドルトンの秘書グリッグスは女性秘書プリチャードに手紙はファイルしておくように命じる。返事がないことをジュリーは寂しがる。

 2年が経とうとするが、ペンドルトンは一度も返事を書かなかった。ジュリーの手紙を読み、彼女に同情したプリチャードはグリッグスに返事を書くよう責める。グリッグスはペンドルトンを同じように責め返事を書くように言う。さらにジュリーの同部屋にペンドルトンの姪リンダがいることも伝える。

 ペルドントンは初めてジュリーからの手紙を読む。ジュリーの思いを知ったペルドントンは姉に電話しリンダが元気かと尋ねる。そしてリンダ(とジュリー)のいる大学でダンスパーティがあることを聞き大学を訪ねることにする。

 ペルドントンはパーティで初めてジュリーに会って話をする。同室の友達の兄ジミーとジュリーが恋仲であることも知る。そして二人は一緒にダンスを踊る。大学から戻ったペルドントンはジュリーからの手紙でジミーが就職先を失ったことを知り、自分の会社で彼を雇うことに。

 ペルドントンは姪のリンダとジュリーをニューヨークへ来るように誘う。しかしニューヨークに来たのはジュリーだけだった。彼はジュリーをホテルの部屋へ案内し、一緒に部屋で夕食をとることに。二人は話をし意気投合する。翌朝ペルドントンは指輪を用意しジュリーに結婚を申し込むつもりでいた。

 朝食をホテルの部屋のベランダで取っていると、隣の部屋に例の大使が泊まっており二人の会話を聞いて、ペルドントンを呼び出す。そして話が違うと怒り、恋人を外国へ追いやったことをダビデ王になぞらえて彼を叱責する。誤解だと言い訳するペルドントンだったが、大使の言う通りだと気付き、ホテルから去り、ジュリーの恋人をアメリカに呼び戻して働かせる。

 ジュリーの卒業が近づく。しかしペルドントンはずっと外国を旅しており、彼に会えないジュリーの気持ちは晴れなかった。ジュリーは足ながおじさんに手紙を書き会いたいと伝える。その手紙を読んだプリチャードは彼女に同情し、嘘の電報を打ってペルドントンを帰らせることに。

 ジュリーの卒業式にプリチャードが出席し彼女に会い、足ながおじさんと会うためニューヨークへ行くことに。家に戻りジュリーが来ることを知らされたペルドントンはグリッグスを足ながおじさんに仕立てることにするが、そこへリンダがやって来て、ジミーと結婚すると話す。それを聞いたペルドントンは祝福する。

 ジュリーがプリチャードに連れられ家にやって来る。そこにペルドントンがいて彼女は驚くが、彼こそが足ながおじさんだったことに気づき、彼の求婚を受け入れる。そんな二人をグリッグスとプリチャードは微笑みながら見守っていた。

 

 アステアの映画はこのブログを始めて4本目となる。どの映画も彼のダンスが一番の見せ場となるミュージカルであるため、正直映画のストーリーはどうでも良いようなものばかりだったが、この1本はまさにシンデレラストーリーであり、大人のおとぎ話のよう。後の「マイ・フェア・レディ」などにも影響を与えたのではないか。

 もちろんアステアのダンスも相変わらず見事。冒頭のドラムスティックを使ったダンスはピカイチ。大学のダンスパーティでのシーンも若者の中で全く負けていない。

 原作の「足ながおじさん」とは異なるストーリーらしいが、これはこれで大成功ではないだろうか。映画冒頭でペルドントン家の屋敷内を見学者に案内する場面があるが、これがラストのオチに使われるとは。ストーリー全体も見事だったが、このオチも見事。さらに言えば、アステアの秘書を務める二人グリッグスとプリチャードもコメディリリーフィ的な役割を越えて、見事な役回りを魅せている。

 これまで観たアステアの映画ではこれがベスト。