Wの悲劇

●362 Wの悲劇 1984

 女優を目指す静香は役者として必要だと劇団の先輩五代と寝る。オーディションのため練習をしている時に森口と知り合う。オーディションで目指していた役は取れなかった静香は森口とヤケ酒を飲み、彼の家で一夜を共にする。翌日森口は静香に女優になれなかったら結婚をして欲しいとプロポーズをする。

 新しい舞台が始まる。静香もチョイ役として出演、夜誰もいなくなった舞台で目指していた役の練習をしていると、主演女優羽鳥に見つかってしまう。ホテルに戻った静香は羽鳥に呼び出され彼女の部屋へ行く。そこでは羽鳥の愛人が死んでいた。スキャンダルを恐れた羽鳥は静香に役をあげるので、愛人を静香の部屋で死んだことにして欲しいと頼む。静香は承諾してしまう。

 静香のスキャンダルはマスコミに知れ、会見を行うことに。羽鳥は共演者に難癖をつけ、静香を役に抜擢する。共演者たちはスキャンダルを理由に反対するが、羽鳥は強引に決めてしまう。

 初舞台が終わった後、役を降ろされた女優が真相を語り、静香を刺そうとする。そこへ森口が現れ代わりに刺されてしまう。

 後日、回復した森口に静香は会いに行く。森口はよりを戻そうと話すが、静香は一人でちゃんと生きて行くと話し、森口の元を去って行く。

 

 古い映画だし、薬師丸ひろ子角川映画なのだが、原作とは全く異なる映画と聞いていてこれまで観たことがなかった。今回が初見。

 観終わって初めの感想は、よく原作者夏樹静子がこの映画化を許したなぁというもの。原作の推理小説は劇中劇として、設定や結末だけが使われてしまっている。言わば美味しい部分だけを使われているわけで、推理小説としてはダイジェストを見せられている感じなので。

 映画は主人公薬師丸ひろ子が女優になって行く過程を描いたもので、前半はちょっと退屈であるが、途中、三田佳子の愛人がホテルの部屋で死んでしまったあたりからやっと面白くなってくる。それでもまぁそうだろうなぁという展開しかなく、昭和の角川映画だと思っていたが、ラストの薬師丸ひろ子世良公則の別れの会話のシーンがとても良かった。この結末を先に思いついたのではないか、と思えるほど。去って行く薬師丸に世良が拍手する、のが秀逸。ラストの薬師丸の表情も良かったし、彼女の歌う主題歌も名曲。

 ラストの5分で評価を上げた1本、かな。