Love Letter

●364 Love Letter 1995

 渡辺博子は恋人の3周忌に参列、彼の実家へ行き中学の卒業アルバムを義母から見せてもらう。そこに記されていた彼の中学時代の住所へ手紙を出す。それを受け取った同姓同名の藤井樹は不審に思い返事を書くことに。

 死んだ恋人に向け手紙を書いたつもりの博子は返事を受け取り戸惑い、新しい恋人秋葉に相談し手紙を出し続ける。樹は自分の免許書のコピーを同封、もう手紙は書かないでと返信して来る。

 秋葉は自分の用事があるため、博子に藤井樹の住む小樽へ一緒に行こうと誘う。二人は樹の家を探し当てるが、本人は留守だった。博子は事情を書いた手紙を投函し、樹に会わずに帰る。その時乗ったタクシーの運転手の話から、博子は自分が樹に似ていることを知る。恋人の実家を訪ねた博子は、義母に恋人が中学時代の同級生のことが好きだったため自分に惚れたのだと話し涙する。

 博子からの手紙で事情を知った樹は勘違いを謝罪し、中学時代の同級生樹との思い出を手紙に書いて博子に送る。こうして二人の奇妙な文通が始まる。同姓同名の男女だったため周りにからかわれたこと、同じ図書委員に選出されたこと、テストの答案を間違えた返されたこと、同級生樹に惚れた女の子の告白に付き合ったこと、競技大会前に彼が怪我をしてしまったこと、など。

 博子は樹に感謝し、恋人が走っていた中学のグラウンドの写真を撮ってほしいとお願いする。中学校に行った樹は恩師と出会い、現在の図書委員たちと会話する。そこで同級生樹が本の貸出カードに書いた多くの名前を探すことが彼女たちの間でブームになっていると聞かされる。その時中学生たちは、名前をいっぱい書いたのはその人が樹のことを好きだったからだと話す。

 博子は秋葉とともに恋人が遭難した山へ行くが、直前に山へ行くことを拒否する。

 樹は引いていた風邪をこじらせ高熱を出し倒れてしまう。家族が病院へ運ぶ。

 博子と秋葉は秋葉の友人宅を訪れ泊めてもらうことに。そこで恋人樹の思い出話をする。翌朝秋葉は博子を起こし山に向かって叫ぶ。博子も樹に向かって叫ぶ。

 病院で治療し助かった樹は博子に最後の手紙を書く。それは父親が亡くなった正月の話。父の死去で冬休み明けに学校に行けなかった時に同級生樹が訪ねて来て図書館の本を返しておいてほしいと頼まれたこと、その樹が冬休みの間に転校してしまっていたこと、などだった。博子はこの思い出は樹が持っていた方が良いとこれまでの手紙を全て樹に送り返す。その博子の元へ中学生の図書委員たちが発見があったと訪れる。それは最後に樹が渡して来た本で、貸出カードの裏に中学生の樹の似顔絵が描いてあった。

 

 公開当時話題になった映画だが見る機会もなく今回が初見。

 前半終わり小樽で二人の中山美穂がすれ違うシーンを見て、「あぁこれは『世にも奇妙な物語』なのか」と思ったが(笑 、後半全く違う展開に。二人の樹の中学生時代のエピソードが心に響く。これを郷愁というのか何と言うのか。酒井美紀が可愛く役柄にピッタリ。柏原崇も良い味を出している。そして貸出カードの名前のエピソードが現在の中学生たちの遊びにつながっていて、そこでの中学生たちのセリフで映画の本当のテーマが見えて来る。これがラストシーンにも繋がって、観ている間ずっとモヤモヤしていたものがスッキリ。あぁこの二人の初恋が一番のテーマだったのか。

 中山美穂が二役やっているためちょっと混乱したり、序盤中盤と映画が何を語りたいのかがよくわからなかったり、終盤の樹(中山美穂)が高熱で倒れるシーンの必要性を感じなかったり、モヤモヤはいろいろとあったが最後にスッキリできるので良しとするか(笑

 岩井俊二監督の作品は初めて観たと思っていたが、よく考えれば「打ち上げ花火〜」をTVドラマ版もアニメ映画版も観ていた。この人が描く子供の頃の初恋に関わる話はやっぱりちょっと切なくてやっぱり面白い。

 前半と後半で違った顔をみせる映画だが、なかなか面白かった。