鬼平犯科帳 第8シリーズ #06 おれの弟

第8シリーズ #06 おれの弟

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 滝口丈助は、第十一代目当主高杉庄平の高杉道場の師範代で、やがては庄平の後継者とされる剣士であった。鬼平は見回りの途中で雨に見舞われ、弟のように可愛がっていた高杉道場同門の滝口の家に寄る。しかし滝口の様子に異変を感じ彼のあとをつける。

 滝口は刀研ぎ師の今井宗仙の元へ刀の研ぎを頼みに行く。しかし宗仙はおらず妻のお市が留守番をしていた。滝口とお市は、お市が街中で暑気あたりで倒れたのを介抱したのが縁で知り合い、二人は互いに惹かれあっていた。

 役宅に戻った鬼平は久栄に滝口のことを尋ねる。滝口は正月に酒を持って訪ねて来ていた。嫁取りについては、剣術使いに女房はいらないと言っていた、と久栄は答える。久栄と彦十に卵酒を振る舞った鬼平は、滝口の思い出を語る。彼は鬼平の弟弟子で、命の恩人だと話す。久栄は滝口に何かあったのかと尋ねる。鬼平は彦十に明日五鉄におまさと来て欲しい、滝口のことで調べて欲しい事があると話す。

 鬼平は酒井に命じ滝口のことで宗仙に話を聞きに行かせる。宗仙は滝口の刀研ぎが多いこと、高杉道場の後継者問題で揉め事が起こっていると話す。

 酒井からの報告を聞いた鬼平は、酒井、彦十、おまさに滝口の周りのことを調べさせる。高杉道場では御側衆筆頭、石川筑後守の三男源三郎が滝口にからんでいた。

 宗仙はお市に刀の研ぎが終わったので滝口の家へ届けるように話す。滝口と二人きりになったお市は自分の過去を明かし、滝口に惹かれていることを告白するが、滝口はお市を突き放す。

 滝口は源三郎から果たし状を受け取る。そしてお市を茶屋に呼び出し、果たし状のことを告げ、きっと源三郎は汚い手を使ってくるので自分は死ぬだろう、だから別れを告げに来たと話す。その夜二人は結ばれる。

 おまさたちから話を聞いた鬼平は、明朝果たし合いがあると見抜き、滝口のあとをつける。滝口は果し合いの場へ出向くが、源三郎の仲間の矢に射られてしまう。鬼平が飛び出すと源三郎たちは逃げる。滝口は死んでしまう。酒井は滝口の差料をお市に届ける。その夜お市はその刀で自害する。

 鬼平は久栄に滝口は哀れであったと話すが、久栄はお二人には満ち足りた一時だったと答える。鬼平は滝口の墓を立てるが、その場へ宗仙がやって来てお市の遺髪を一緒に入れてやって欲しいと頼む。

 鬼平はこの一件を京極備前守に訴えたが、備前守は自分の力ではどうしようもできないと答える。そう言われた鬼平は平伏する。

 時が経ち、広尾ヶ原を馬で駆けていた源三郎とお供の者が襲われる。襲ったのは鬼平と酒井。鬼平は弟の仇だと源三郎を討つ。

 後日鬼平備前守に招かれ一緒に酒を飲む。備前守は源三郎が死んだことを告げ、鬼平に酒を勧めその盃のまま返盃を求める。

 

 これは正確には鬼平が罪を犯す話、と言って良いだろう。弟のように可愛がっていた滝口を卑怯な手で殺され、備前守に訴えるが、相手の親が御側衆のため願いが叶わず、仕方なく鬼平が自ら手を下す、というもの。今のうるさい世の中からすれば「コンプライアンス的に」などと非難されるかもしれないが、鬼平ワールドではこれで良いのだ。

 最後に源三郎を討った後の鬼平の刀を鞘に収める時のカッコ良いこと。そしてラストの備前守の返盃も。鬼平シリーズではスカッとしないラストもままあるが、これはスカッとする度では満点の出来。

 余談だが、滝口が惚れる相手役の真行寺君枝さん、たまたま最近見た「俺たちは天使だ」18話にゲスト出演していたのでちょっと驚いた(笑 昔はよく見た女優さんだが最近どうしているのだろう?

 それにしても第8シリーズに来てこんな作品が残っているとは。この後もまだまだ楽しめそうだ。