笑の大学

●369 笑の大学 2004

 昭和15年秋。劇団笑の大学の座付作家椿一が新しい舞台劇の脚本の検閲を受けるために警視庁の検閲係向坂の元にやってくる。

 1日目。笑いが嫌いな向坂は椿の脚本を認めない。食い下がる椿に向坂は、舞台を日本にし、登場人物を全て日本人にすることという条件を突きつける。

 2日目。椿は昨日向坂の言ったセリフを取り入れた脚本を提出、向坂は今度はお国のためにというセリフを入れることを要求する。

 3日目。椿は要求されたセリフ入れたがそれを笑いにしてしまい、向坂の怒りを買ってしまい書き直しを要求される。さらに接吻の場面も削除するように言われる。

 4日目。椿が書き直した脚本を向坂が認める。しかし所轄署の署長から警官を登場させて欲しいと要求され、場面を追加するように言われる。

 その夜、向坂は劇団笑の大学の劇場前まで足を運ぶがそのまま帰る。

 5日目。恋人たちの接吻を警官が邪魔するシーンについて向坂が変更を求める。椿が書き直しのために帰ろうとすると、向坂がアイデアを出し、2人はそのシーンについて議論を始める。

 その夜、向坂は劇団笑の大学の劇場を訪れ、舞台を鑑賞する。

 6日目。2人は舞台衣装をまとい、劇の一部を再現させる。向坂は舞台を観た感想を述べ舞台の問題点を指摘するが、椿はその必要性を話す。そしてとうとう脚本に許可が下りる。向坂は劇場に行った際に聞いた噂話を椿にし自分のせいで椿が責められていることに謝罪する。それを聞いた椿は自分の本音を明かす。椿の本音を聞いた向坂は、脚本の許可を取り消し、一切の笑いのない脚本に書き直すように要求、椿も受け入れる。

 7日目。椿の書いてきた脚本はこれまで一番面白い脚本だった。要求が聞き入れられず不思議がる向坂に椿は自分宛に召集令状が届いたことを明かす。向坂は椿に生きて帰ってこの脚本の舞台をするように話す。

 

 初見。三谷幸喜の映画であること以外は何も知らずに観たので、冒頭主演の1人の顔がずっと隠されたままで最後に稲垣吾郎の顔が現れた時にはちょっと驚いた。

 舞台は2人の登場人物の会話劇。5日目の辺りで映画の半分が過ぎ、だんだんと脚本作りに入っていく向坂が笑いのポイントだろう、このまま2人で脚本を完成させるのだろうと思って観ていたら、後半一気に話が別展開を魅せる。

 戦時下の軽演劇の脚本検閲ということで、テーマは笑いを封じた当時の政府に対する批判なのはすぐにわかる。それを笑い飛ばす展開になるのかと思ったが、後半は真面目に笑いの必要性、検閲の不条理さを説いていく。

 三谷幸喜作品なので最後まで笑いで行くかと思っていたら真面目な展開となり驚いた。

 稲垣吾郎が主役なのは意外にあっていたと思うが、監督が古畑任三郎シリーズやフジテレビの稲垣金田一を撮っていた人だとわかり、余計に納得。日々の経過を示す「○日目」の表現や稲垣が歩く劇場前の風景、エンドロールの背景の絵、などどれも戦前の昭和をイメージされていて、なかなかオシャレなのもマル。