魔女のパン オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

●魔女のパン オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

 オーヘンリーの全8編からなる短編集。特に良かったものを2つ。

 

 「魔女のパン」

 マーサはパン屋を営む40歳の女性。毎日売れ残りの古いパン2つを買って行く中年男性が気になり始める。彼の指の汚れから貧しい画家だと思ったマーサは、ある日彼の買ったパンに気づかれないようにバターを塗ってあげる。するとしばらくして男性が店に戻ってきてとても怒り始める。一緒に来た男性が曰く、彼は建築家でずっと設計図を書いており、。図の鉛筆の下書きを消すためにパンを使っていた。完成間近の設計図にパンを使ったら…

 

 「アイキーのほれ薬」

 アイキーは薬剤師。下宿している家の娘ロージーに惚れている。恋のライバルで同じ下宿人のマゴーワンがいる。ある日マゴーワンがロージーと駆け落ちをすると話し、それでも不安な彼はアイキーにほれ薬を作ってくれと頼む。アイキーは偽って睡眠薬をマゴーワンに渡し、ロージーの父に娘が駆け落ちをすることを密告する。父親は激怒し銃を持ってマゴーワンを待ち伏せするが…

 

「伯爵と結婚式の客」 ドノバンは同じ下宿人のコンウェイに惹かれ婚約するが…

「同病あいあわれむ」 泥棒が入った家の住民とお互いのリュウマチについて話し出す

「消えたブラック・イーグル」 悪名名高い盗賊ブラック・イーグルの顛末

「運命の衝撃」 叔父からの支援を失い浮浪者になったバランスが公園で…

「ユーモア作家の告白」 ユーモアを売りにしていた作家がスランプに陥り…

「休息のないドア」 地方紙の編集長のもとにマイコブ・エイダーを名乗る男が現れる

 

 取り上げた2本はさすがにニヤッとさせられた。「思い込み」と「策士策に溺れる」ってヤツかな。オチが見事。そのままコントになりそうな話。

 その他も面白いものが多かったが、ブラックイーグル、ユーモア作家、休息のない、はちょっとブラックが過ぎる感じ。好きな人は好きなんだろうけど。それとも当時はこんなブラックが人気だったのかしら。