賢者の贈り物 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

●賢者の贈り物 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

 オーヘンリーの全8編からなる短編集。特に良かったものを2つ。

 

 「賢者の贈り物」

 クリスマスを迎える若い夫婦。妻は金がないため夫へのクリスマスプレゼントに自分の自慢の長い髪を売って、夫の懐中時計用のチェーンを購入し、夫の帰りを待った。家に帰ってきた夫は妻へのプレゼントとして櫛を買ってきたが、そのために懐中時計を売ってしまっていたのだった…

 

 「お金の神さまとキューピッド」

 会社経営者アンソニーが息子に金を使って紳士になれと説教するが、息子は金では買えないものがあると答える。息子はある女性に惚れているが、彼女が明後日にはヨーロッパへ旅立ってしまうためチャンスがないと話す。翌日息子がその女性と会うと道が大渋滞を起こし、二人は馬車の中ゆっくりと話すこととなり、息子は女性に告白、婚約をすることになる。翌日アンソニーに元へ男が現れ、渋滞を起こすためにかかった費用を請求する。

 

荒野の王子さま」使用人としてこき使われ疲れたレナが親に手紙を書くが…

「鳴らないピアノ」父が買ってくれたピアノを娘が父の死の間際も弾かなかった理由

「紫色のドレス」メイダは感謝祭のために紫色のドレスを買うお金を貯めたが…

「平和の衣」伊達男と言われたベルチェンバーズが行方不明になり、見つかった場所は

「騎士道の守り手」銀行頭取が夜中に金庫室から何かを持ち出したのを見た下僕は…

「選んだ道」証券会社に勤める男が西部時代に銀行強盗をやっている夢を見るが…

 

 今回は何と言っても「賢者の贈り物」だろう。今や日本では、昔話と同じように皆が知っている話。かと言って次の巻のタイトルになっている「最後のひと葉」のように教科書に載っていた記憶はない。何で知ったんだろう?昭和のコントなのかなぁ?

 今回改めて読んで見て驚いたのは、著者がこの作品の中で、東方の三博士まで持ち出して、この夫婦のことを賢者だと断言していること。オー・ヘンリーの小説は、ストーリー展開で読ませ、教訓めいたことを直接言葉にすることはないのだが、この作品だけはハッキリとそれを書いている。これがこの話を有名にした一つの理由なのかしら。