断崖

●381 断崖 1941

 箱入り娘のリナは列車でジョニーと偶然出会う。ジョニーは三等席の切符しか持たずにリナのいる一等席へ乗り込んでくる。差額を持っていなかったジョニーはリナから切符をもらい支払いをする。驚くリナだったが持っていた新聞にジョニーの写真が掲載されており、彼が社交界で有名なプレーボーイだと知る。

 ジョニーは街で偶然乗馬をするリナを見かけ知り合いの女性たちにリナのことを訪ねる。彼女たちがリナの家を訪ねるのに付いていき、リナを教会へ誘う。行くつもりのなかったリナだったが、ジョニーの誘いを受け入れる。教会へ着いたジョニーはリナを散歩に誘う。そして家へ送る。家の中で両親が自分のことをオールドミスだと話しているのを聞いたリナはジョニーにキスをし、彼の午後の誘いを受ける。

 リナがジョニーと一緒だったことを話すと父親は猛反対する。その時ジョニーから電話があり午後行けなくなったと告げられる。その後リナはジョニーからの連絡を待つが一向に連絡は来なかった。

 リナの家に舞踏会への招待状が届く。ジョニーに会えないリナは元気がなく舞踏会は欠席するつもりだったが、当日ジョニーから電報が来て舞踏会で会おうと言ってくる。リナは舞踏会へ出かけることに。ジョニーは舞踏会に招待されていなかったが、乗り込んで来てリナをドライブへ連れ出す。そしてリナの家へ。ジョニーはリナの肖像画の前でリナにプロポーズをする。

 二人は結婚しヨーロッパで新婚旅行をし、新居に帰ってくる。リナはそこで旅行代金や新居にかかったお金が全て借金であることを知る。リナはジョニーを問い詰めるが彼には働く気がなかった。そこへ両親から電話がかかり、リナの結婚祝いに家にあった椅子を送ると知らせてくる。喜ぶリナだったがジョニーは無関心だった。ジョニーは友人の紹介の不動産会社で働くと話す。

 新居にジョニーの友人ビーキーが訪ねてくる。その際リナは親から送られた椅子がないことに気づく。ビーキーはジョニーが競馬に行ったことをバラしてしまう。帰って来たジョニーにリナは尋ねるがジョニーは椅子はアメリカの友人に売ってしまったと告白する。

 リナは街で推理作家の友人に会うが、その際近所の店で例の椅子が売りに出されていることを見つけてしまう。家に帰ったリナだったが、ジョニーがたくさんのプレゼントを抱えて帰ってくる。椅子を売った代金で買った馬券が大当たりしたのだと言う。ジョニーはこれが最後の競馬だと話し、椅子も買い戻していた。お祝いの乾杯をするが、ブランデーを飲んだビーキーは具合が悪くなってしまう。前からビーキーはそうなるのだった。

 リナは友人からジョニーが競馬に行っていたと聞く。彼の勤める不動産会社へ行くと上司がジョニーは会社の金を横領していたからクビにした、しかし告訴はしないと話す。家に帰ったリナはジョニーに別れの手紙を書くが破いてしまう。その時ジョニーが現れ、リナの父が病気で亡くなったことを告げる。父の遺言でリナはわずかな財産を受け継ぐことになった。

 ジョニーはビーキーと一緒に断崖の開発をする会社を立ち上げる。リナは反対するが、ジョニーに怖い声で仕事のことに口を出すなと叱られる。反省するリナだったが、ジョニーはすぐに開発は辞めにすると言い出す。リナはジョニーがビーキーを殺すのではないかと疑い始める。ジョニーがビーキーを車で送って行くと話し、翌朝早くに家をでる。それに気がついたリナは断崖へ行くが誰もおらず家に戻る。そこにはジョニーとビーキーがいた。ビーキーの話では断崖で危険な目にあったが、ジョニーに助けてもらったということだった。ビーキーがロンドンに帰ると言うのをジョニーが送ることに。

 ジョニーが留守の間に刑事がリナの家へ。パリでビーキーが亡くなった、彼はブランデーを飲んで死亡した、その時ビーキーには連れがいて相棒と呼ばれていたとのことだった。リナはジョニーがロンドンで泊まるホテルに電話をするが、彼はいなかった。

 リナは友人の推理作家の家へ。ブランデーを飲むと命の危険がある人間にブランデーを飲ませるのは罪になるかを尋ねるが、友人はそれに関する裁判記録をジョニーに化していると話す。家に帰ったリナはその本を見つける。その本には不動産会社へ金を返すと書かれた手紙が挟まっていた。その時保険会社から、ご主人から問い合わせがあった件は手紙で返答しました、と電話がある。

 翌日保険会社からの手紙をリナは盗み読む。そこには融資はできず、支払いは奥様が亡くなった場合のみ、と記載されていた。

 リナとジョニーは推理作家の家で夕食を共にする。そこで絶対に気づかれない毒薬の話になり、ジョニーは興味を示す。その日家に帰ったリナはジョニーと別に寝たいと言いだし倒れてしまう。ジョニーは推理作家を呼び、リナを看病する。リナは作家と話をし、彼女が毒薬の話をジョニーにしたことを聞く。その晩ジョニーがミルクを持ってリナのベッドを訪ねる。しかしリナはそのミルクを飲まなかった。

 翌日リナは実家へ帰ることに。ジョニーは反対するがリナは受け入れず、そのためジョニーが車で送ることに。車のドアが開きそれをジョニーが閉めようとしたのをリナは殺されると勘違いし騒ぎ出す。車を止めて話し合う二人。リナはジョニーが作家に聞いた方法で自殺をしようとしていたと考え、自分の勘違いを謝罪、二人は家に帰ることに。

 

 これは物議を醸し出すラスト。セリフの通り受け取れば、全てはリナの勘違いだったと思うが、よく観ていると疑わしい点がある。

 友人ビーキーが死んだ際のジョニーの居場所(ホテルを出たタイミング)

 ビーキーが死んだ店の店員の証言(彼は連れのことを「相棒」と言っていた)

 

 リナに飲ませようとしたミルクの問題もあるし、そもそも借金など全く苦にしてこなかったジョニーが自殺で全てを解決しようとするのか、という疑問もある。

 

 ヒッチコックが最後に、ニヤッと笑うジョニーを映し出せば良いのに(笑 それでもそれを描かないで、観客に本当の怖さを考えされる手法だったのかな。

 1時間40分の映画だが、1時間を越えたあたりから、ヒッチコックらしい怖い映像が連発する。ラストへの盛り上げとも考えられるが、ジョニーの人間性の怖さを表したと思えるのは気のせいか。

 見えない恐怖、のさらに上をいくヒッチコックの新しい仕掛けだったように思う。