最後のひと葉 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

●最後のひと葉 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

 オーヘンリーの全8編からなる短編集。特に良かったものを2つ。

 

 「最後のひと葉」

 スーとジョンシーは同居する若い芸術家。ある時ジョンシーが肺炎にかかってしまう。スーは医者からは彼女が助かる見込みは低い、彼女の生きがいを見つけないと助かる確率がもっと低くなる、と言われる。ジョンシーはベッドから窓の外を見て、隣家の壁のツタの葉の枚数を数え、あれが全て落ちたら自分が死ぬんだと言い始める。

 スーは自分の絵のモデルになってもらうために一階に住むベアマン老人に頼みに行く。ベアマンは酒浸りでいつかすごい絵を描いてみせると言っている絵描きだった。スーはジョンシーのことを老人に告げる。スーは老人の絵を描くが、外では冷たい雨が降っていた。

 翌朝ジョンシーが窓の外を見ると葉が一枚だけ残っていた。しかしその日も天気は悪く嵐となる。翌日窓を開けるとまだ一枚の葉が残っていた。それを見たジョンシーは生きる希望を取り戻す。医者がやってきて、もう大丈夫だと太鼓判を押す。医者を見送ったスーは1階の老人が肺炎にかかったことを知る。

 翌日老人は死んでしまう。スーは老人が壁に葉を描いてくれたことを知り、それをジョンシーに告げ、最後のひと葉は彼の傑作だったと告げる。

 

 「詐欺師の良心」

 詐欺師の二人、慎重なジョンと大胆なアンディ。ジョンは金をだまし取るなら相手に何か持たせてやりたいという信条だった。アンディがピッツバーグの大富豪を騙すため、富豪の持つものの片割れというエジプトの骨董品を質屋で見つけてくる。それを大富豪に売り渡し大金をせしめるが、それはアンディが富豪の家から盗んだものだった。

 

「水車のある教会」大富豪エイブラムが水車小屋のある教会で出会った娘は…

「愛と苦労」若き芸術家ジョーとディーリアは結婚、お互いにお金を稼ぎ始めるが…

「王女とピューマ」家畜王の娘ジョセファに惚れたギブンスは彼女の前で嘘をつくが…

「黄金のかがやき」南米からやってきた将軍に詐欺師が武器を売り込む嘘をつくが…

「ラウンドのあいだに」マーフィーの下宿にいるマカスキー夫妻の夫婦喧嘩

「ジョン・ポプキンズの完璧な人生」貧乏と恋愛と戦争を一挙に経験するポプキンズ

 

 今回はやはり「最後のひと葉」。教科書にも載っている有名な話。だが読み直してみると、一階に住む老人=壁に最後のひと葉を描いた人物、のことは完全に忘れていた。というよりは、この話は、窓から見えるひと葉を使ったコントを何度も見ているから、そこだけがフューチャーされ過ぎている感じか。

 本作はこれ以外にも小粒の傑作が多い。

 上で取り上げた「詐欺師の良心」のオチもさえている。なぜ大富豪の持つ骨董品と同じもの=大富豪を騙せるほど似ているもの、が質屋などにあったのか、と疑問を持って読んでいたが、そういうことかという見事なオチ。

 「水車のある教会」はある程度オチが読める展開だったが、娘と判明するための伏線がしっかりと貼られていたことに驚く。

 「愛と苦労」は劣化版の「賢者の贈り物」。最後のオチが判明する理由が面白い。

 「王女とピューマ」は意外なオチ。女性のしたたかさというか、女性の怖さというか。

 

 やっぱり流石だと言わざるを得ない。このシリーズも後半に入ってきた。あと3冊。