間違えられた男

●387 間違えられた男 1956

 マニーは妻と2人の息子と平和に暮らすバンドマン。1953年1月14日早朝、仕事を終えた彼は自宅へ帰る。すると妻が歯痛のためまだ起きていた。彼女は治療に300ドルかかることを懸念していた。朝マニーは保険を担保にし300ドルを借りることを思いつく。マニーに母親から電話が入り、父親の具合が悪いとの知らせが入る。マニーは保険会社へ行った帰りに実家へ寄ることにする。

 マニーは保険会社へ。すると窓口の女性がマニーの顔を見て、この会社に2回強盗に入った男にマニーが似ていることをに気づき他の店員に伝える。他の店員も同意し、警察へ連絡することに。

 実家に立ち寄り家に戻ったマニーを警察が待ち構えていた。彼は家に入る前に警察へ連行される。事情を知らされたマニーは容疑を否定するが警察は首実検のため、強盗にあった他の店へマニーを連れて行く。警察に戻ったマニーは事情聴取をされる。さらに強盗が残したメモと同じ文章を書かされるが、その時言葉の間違いをしてしまい、それが強盗の残したメモと全く同じミスだったため、さらに疑われてしまう。保険会社の女性店員が連れてこられ再度首実検をされ、マニーは完全に疑われてしまい、勾留されることに。指紋を取られ留置場に入れられる。

 妻の元へマニー逮捕の連絡が入る。マニーの母親や妻の妹夫婦も来ており、皆で知らせに驚く。

 翌日マニーは裁判所へ連れて行かれ聴聞会の日程が決められる。保釈金は7500ドルだと言われ、そのまま刑務所へ。しかし妻の妹夫婦が保釈金を用意しマニーは保釈される。妻はオコーナー弁護士を紹介されたため彼に連絡をし夫婦で会いに行く。オコーナーは話を聞き、事件を引き受けてくれることに。さらに強盗事件があった日のアリバイがないかを思い出すように言う。妻がその日は田舎へ休暇に行っていたことを思い出す。二人はそのホテルに行くが、従業員は夫婦がその日に何をしていたかは覚えていなかった。その場でマニーは他の客3人とカードをやっていたことを思い出す。従業員が宿泊名簿を持って来て他の客の名前を教えてくれる。二人はその客たちに会いに行くが、3人のうち2人はすでに死んでしまっていた。

 証人になってくれるはずの人が死んでいたことを知り、妻は絶望感に襲われる。そして自分の歯痛が全ての原因だと話し始める。二人はオコーナーに調べたことを報告に行くが、妻は弁護士事務所でも上の空だった。オコーナーはマニーに妻を医者に診せるように勧める。

 マニーは仕事を終え家に戻ると妻が起きて待っていた。妻は2日間も寝ておらず食事もロクに取っていなかった。心配するマニーだったが、妻は何をしてもマニーが有罪になってしまうと恐れており、精神的におかしくなり始めていた。マニーは妻を精神科医に診せる。医者は妻を然るべき場所で療養させるべきだと話す。マニーは妻を療養所へ入れる。

 マニーの裁判が始まる。時間がかかるが、途中陪審員の一人が弁護士の尋問に文句をつける。オコーナーは裁判官に審理のやり直しを提案、受け入れられる。裁判が最初からやり直しになることとなり、マニーも精神的に追い詰められる。

 そんな時、本当の強盗犯がまたもや強盗事件を起こす。しかし押入られた店の従業員の機転で強盗犯は逮捕される。マニーにも真犯人逮捕の連絡が入り警察へ。そこで自分のことを強盗犯だと言った保険会社の女性店員と会うが、彼女たちは逃げるようにマニーの元から去って行く。

 マニーは真犯人逮捕のニュースが載った新聞を持って療養所の妻に会いに行くが、妻の症状はまだ治っていなかった。

 しかし2年後妻は全快しマニーたちは平和に暮らしていた。

 

 映画冒頭でヒッチコックが語っているようにこれは実話を基にした話で、彼の作った映画よりももっと恐ろしい話である。

 一言で言えば「冤罪」であるが、この映画で描かれるその姿は本当に怖い。

 保険会社の女性店員の証言があったその日のうちに主人公は警察に拘留されているのがまず怖い。映画を観る限りでは、逮捕理由は「女性店員の証言」と「主人公が強盗の残したメモと同じ書き間違いをした」という2つの点のみである。

 さらに裁判になるが、主人公夫婦がホテルで過ごしたというアリバイはどうなっていたのか。主人公がホントはホテルにいなかったということを検察側が証明しなくてはいけないのではないのか?それともこの当時のアメリカではこれが普通だったのか?

 映画ではうやむやになってしまっている感じがするが、主人公の歯痛で頰が腫れていたという話もあったのに。これらのことを全て無視して裁判が進んでいるのも怖い。

 

 しかし本当の強盗犯が再犯で逮捕されるという展開で主人公の嫌疑は晴れる。ラスト近く、証言をしたはずの保険会社の女性店員の態度も気に食わないが(笑 それでも妻の症状が全快するのに2年も要したなんて…

 

 確かにこれまで観たどのヒッチコックの作品よりも怖かった(笑