●赤い酋長の身代金 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション
オーヘンリーの全7編からなる短編集。特に良かったものを1つ。
「ありふれた話」
新聞記者の私の元へ酒代欲しさにトリップがやってくる。彼は田舎から出てきた初恋の相手を探しにNYへやってきた若い女性エイダを紹介してくる。彼は酒代欲しさに彼女のことを新聞記事にすれば良いと提案してくる。
私は彼女に会い、NYで一人の人間を探すことの難しさを説明、帰りの汽車賃を渡しエイダを無事帰らせる。社に戻ろうとした私はトリップがエイダの言っていた初恋の相手の印、半分に割られた硬貨を持っていることに気づく…
「赤い酋長の身代金」名士の一人息子を誘拐し身代金を奪おうとした二人組だったが…
「警官と賛美歌」ソーピーは冬、刑務所に入るために犯罪を犯そうとするが…
「ビアホールとバラ」若手俳優が田舎者に扮し有名女優に取り入ろうとするが…
「ピミエンタのパンケーキ」牧場主の姪に惚れたジャドはライバルから意外な話を聞く
「五月の結婚」富豪と家政婦との恋を富豪の娘が邪魔しようと地下室に氷を仕込むが…
「『のぞみのものは』」富豪が貧しい青年に金を与えようと読書をする男に声をかける
オーヘンリーの短編集ラストの8冊目。相変わらず皮肉とシャレが効いた短編が揃っている。取り上げた「ありふれた話」はその中でも一番皮肉とシャレが効いているように思う。伏線となる人物設定や初恋の相手との思い出が見事にオチにつながる。
オーヘンリーの短編には多くの富豪たちが登場するが、ラストの「『のぞみのものは』」に登場する富豪に声をかけられた若者が最後に取った行動がイカしている。怪しい相手からの金銭の譲与の申し出よりも、若者には大切な時間があるのだ。
これで全て読み終わってしまった。短編というより、超短編と言える作品を久しぶりに味わった感じ。シリーズを通して挿絵は和田誠さんのものでこれまた懐かしかった。次は学生の時以来となる星新一さんのショートショートを読みたくなってきた。