鬼平犯科帳 第9シリーズ #05 闇の果て

第9シリーズ #05 闇の果て

https://www.fujitv.co.jp/onihei/photo/s9-5.jpg

 藤田彦七は、別宅で男とともに上方へ逃げた妻おりつとよりを戻そうとしていた。そこへ別宅を紹介してくれた吉兵衛が浪人たちと現れ、藤田を脅す。

 翌日舟に乗っていた粂八と伊三次はすれ違った舟に顔見知りの藤田が乗っていることに気づき伊三次が声をかける。しかし藤田は顔を合わせようとはせず、同乗していた浪人は伊三次を睨む。粂八はその浪人が渡辺八郎であることに気づく。舟宿嶋やへ戻った粂八の元へ鬼平が訪ねてくる。二人は藤田と渡辺のことを話し、粂八は渡辺が一人働きの凄腕の盗人だと告げる。粂八は去年の夏藤田の娘お弓を川で助けてからの知り合いだった。藤田の妻は男とともに逃げてしまったが、藤田は近所の米屋に奉公していたおみねという女を後添えにもらい、今藤田は和泉屋に手習いの出稽古をしていると話す。鬼平は和泉屋が大店であることから、渡辺が和泉屋を狙っているのでは、と考える。

 粂八は藤田の家を訪ね、藤田が和泉屋の出稽古を休んでいると話す。藤田の妻おみねは娘お弓を買い物に行かせ、藤田が10日ほど帰ってきていないことを粂八に告げる。その帰り粂八はお弓に会う。そしてお弓から父親藤田が元の妻おりつと一緒にいたところを見かけたと聞く。

 そんな中、藤田が家に戻ってくる。それをお弓から聞いた伊三次が鬼平に報告する。粂八は嶋やに藤田を呼び出し酒を飲む。粂八は藤田に10日間も何をしていたのか、実は元の妻おりつと会っているのを見た人がいると告げる。藤田はおりつとは会ったがその日のうちに別れた、そのため知り合いのところで10日間も酒に溺れてしまったと話す。そして和泉屋の出稽古に復帰したいと粂八に頼む。全てを見ていた鬼平は、藤田がおりつのことで渡辺に弱みを握られていること、渡辺は藤田を引き込みにして和泉屋を狙っているだろうと話す。

 早速和泉屋の前に見張所を設ける。その夜和泉屋の前に蕎麦屋が出て藤田は蕎麦屋を訪れ、蕎麦屋に扮した吉兵衛に次の出稽古は5日後だと教える。

 翌日和泉屋を出た藤田を同心たちがつける。藤田は寺で吉兵衛と密会、和泉屋の図面を渡し、前金25両を受け取っていた。同心たちは吉兵衛のあとをつけ、盗人宿を突き止める。知らせを聞いた鬼平は、押し込みは次の出稽古の日だと考え、粂八にその日を聞くように命じる。

 盗人宿ではおりつが渡辺と一緒だった。渡辺は上方でおりつと逃げた男を殺していた。渡辺は藤田のことも殺すつもりだとおりつに話す。

 藤田は小間物屋でかんざしを買う。そして嶋やを訪れ、かんざしと金を粂八に託しおみねとお弓に渡してくれと話す。粂八は藤田から事情を聞こうとするが、藤田は何も答えなかった。粂八は預かったものを役宅へ渡し、藤田の後をつける。それを見た鬼平は盗人宿へ打ち込むことを決める。

 粂八に後をつけられた藤田は油を買い盗人宿へ。そして家に火をつける。一人起きたおりつは家事に気づくが渡辺を起こそうともしなかった。藤田は火事の中、おりつを探すがそこへおりつを連れた渡辺が現れる。渡辺はおりつに本当のことを藤田に告げるように言うが、おりつは藤田に逃げるように話し、自分は燃えさかる家の中へ消えていく。追いかけようとした藤田は渡辺に斬られてしまう。逃げ出す渡辺たちだったが、待っていた盗賊改方に捕まる。

 藤田が残した金は40両となりおみねとお弓に渡される。増えた分は鬼平の思いやりだった。鬼平は粂八と舟に乗っていた。渡辺を助けられず悔やむ粂八に、藤田の定めであり、生きていたとしてもおみねやお弓を幸せにできたのかと話す。二人はおみねとお弓が仲良くしているのを見かけ、鬼平はこれで良いのさ、世の中というものは、と話す。

 

 鬼平レギュラーシリーズ最終話。男が新しい妻と娘を捨て、逃げた元妻を求めてしまう男の話。鬼平シリーズでも見たシチュエーションだと思い、自分のブログを調べたら第7シリーズ#14「逃げた妻」とそっくりだとわかった。さらに調べるとこの「逃げた妻」と「闇の果て(原作では「雪の果て」)」は原作では続き物の話だった。そりゃ似ているわけだよなぁ。

 「逃げた妻」も少し違和感のある話だったのは、こんな理由があったのか。ドラマ化が最終盤になったのもそれが理由だろう。本来続き物であった話をそれぞれ独立させ1本のドラマにしてしまったのだから。

 それらも含め、今回の話は長く続いたシリーズの最終話としてはだいぶ物足りないラストだったと言わざるを得ない。最終話っぽい部分としては、久しぶりに同心村松の料理話が出てきたぐらい(最後の捕物のシーンにも村松がいたのはビックリ。これは初ではないのかしら)。密偵として出てくるのも、粂八と伊三次だけだし。五郎蔵もおまさも彦十も出てこないなんて…。

 1話前で書くのを忘れたが、前回の話「一本饂飩」と今回では伊三次が登場する。伊三次はシリーズ的には第6シリーズの最終話「五月闇」で亡くなっている。第7シリーズで伊三次の生きている頃の話が1話あったが、最終シリーズでも前回に続き2話あることになった。おそらくドラマ化するのに、まだ使っていなかった原作を使用したためだと思われるが、逆に言えば、それだけ原作を全て使い果たしてのシリーズ終了ということなんだろう。

 

 これで中村吉右衛門鬼平シリーズは終了。このブログでは124回目となる(レギュラーシリーズの中でのスペシャル版はブログにしていないため)。2年強をかけて観てきたが楽しい時間だった。もともとスペシャル版「兇賊」を観て、若村麻由美小林稔侍のシーンに魅せられて見始めた鬼平シリーズ。与力同心の活躍、密偵の苦悩や働き、そして鬼平のカッコ良さ。本当に良く出来たシリーズだったと思う。

 今春、松本幸四郎さんで新しい鬼平シリーズが作られることが報じられた。2024年かららしく、あと3年待たなければいけないが、どんなメンバーで新しい鬼平が作られるのか、是非楽しみに待ちたい。