3月のライオン 前編

●399 3月のライオン 前編 2017

 桐山零は幼い頃に家族を交通事故で亡くし、父の友人でプロ棋士の幸田の内弟子となる。自身もプロ棋士となった零は幸田と対局することになり幸田に勝つ。幸田は零との対局後調子を落とす。零は先輩棋士に連れられ酒を飲みに行くが、幸田との対局のことが気になっており、未成年ながら酒を飲んで潰れてしまう。街で潰れていた零に声をかけたのは川本あかりだった。彼女は零を家に連れて帰る。

 翌朝川本家で目覚めた零だったが、川本家の3姉妹は零を残したまま出かけてしまう。零が通う高校に零の昔からの将棋仲間であり同じ棋士の二階堂が迎えに来る。彼は新人王戦で零と戦うのを楽しみにしていた。二階堂と練習将棋を指していた零は川本家の鍵を返していないことに気づき、川本家が営む和菓子屋へ。そしてその日の夕飯をご馳走になることに。その後も零は川本家を訪れることになり、一緒に盆の送り火をする。

 零はお礼を兼ねてあかりの勤めるクラブに先輩を連れて行く。零が家に帰ると家の前で幸田家の長女香子が待っていた。零は彼女を家に入れる。零は幸田家に引き取られ、香子や歩と一緒に将棋の勉強をした過去があった。香子は零に次の対戦相手安井が離婚するなどその家族の情報を伝える。零は安井との対局に勝つが、安井は途中で勝負を諦め感想戦で零に文句を言う。零は安井が家族のために買ったクリスマスプレゼントを忘れていることに気づき彼に届けるが、そこでも安井は零に文句を言う。零はどうすればよかったんだよと叫ぶ。零は幸田家に引き取られた後勉強することでどんどん強くなっていった。幸田家の子供達は零にも勝てないため父から将棋の奨励会を辞めるように言われる。香子はその怒りを零にぶつけ家を出て行こうとするが、零は自分が家を出て行くと宣言する。

 年末零は風邪を引いてしまう。それに気づいた川本家の3姉妹が彼を救出に来て、零は川本家で看病をしてもらう。川本家で年明けTVの将棋番組を見ていた皆だったが、番組内で二階堂が零に助言をしたのを受けて零は大声で叫んでしまう。皆で初詣に行くが、そこで香子が棋士の後藤と一緒なのに出会い香子をたしなめる。後藤は妻子持ちだった。零は獅子王戦トーナメントであと1勝すれば後藤と当たることになっていた。零は後藤の棋譜を取り寄せ後藤対策を勉強する。

 零はトーナメントで島田八段と対局する。これに勝てば後藤との一戦が待っている。しかし零は島田八段との対局で不利に陥る。そしてA級棋士である島田のことをなめてかかっていたことに気づく。零は島田八段に負けてしまう。

 零は新人王戦で勝ち進む。二階堂も勝ち進み、お互いあと1勝すれば決勝で対決するところまで来た。一方、獅子王戦トーナメントでは島田八段と後藤が宗谷名人との対局をかけて対局していた。普段とは異なる二人の対局は殴り合いの様相を呈す。勝ったのは島田八段だった。対局場へ乗り込んだ零は島田八段に研究会に入れてくださいと頼む。

 新人王戦で決勝まで勝ち上がった零は、二階堂が敗れたことを知る。彼は準決勝での対局途中で倒れてしまい入院していた。もともと持病持ちの二階堂は不利な状況を逆転したが、相手は千日手にして対局が伸びた結果倒れてしまったのだった。その棋譜を見た零は決勝でその相手山崎順慶を倒すことを誓う。そして決勝戦、零は途中で強引に手を進めようとした場面で二階堂からの助言を思い出し、丁寧に指し進めた結果、見事に勝利し新人王となる。

 島田八段は宗谷との獅子王戦に挑む。零は大盤解説をすることに。島田は不利な状況に追い込まれる。解説陣も島田の負けを認めたが、零は一人まだ負けていないと話し逆転の一手を示す。しかし島田は投了、感想戦で宗谷が示したのは零が指した一手と同じだった。

 

 去年偶然「3月のライオン」の原作を読み、すっかり虜となり、原作全てとアニメ2シーズンと実写映画を全て観た。最近になりまた読み返したくなり、アニメも見始めた。ついでに、ということで映画の方も。

 昨年観た時にも感じたが、映画は原作とは別物になってしまっている。「桐山零を主人公とした将棋棋士の厳しい世界を描いた映画」と言えば良いだろうか。原作ももちろんその部分を描いているが、そこに「零と川本家を中心とした人々の悩みや喜び」も多く描かれている。映画ではそこがすっぽりと抜けてしまっているため、原作の持つ楽しさがなく、厳しさだけが強調されているように思う。映画という2時間強の中に原作の世界全てを入れるのは難しいのだろうが、作品の持つ雰囲気そのものが変わってしまっているのが残念。

 しかし実写化でありがちな原作キャラとあまりに違う実写化キャラ、というのはない。むしろ一度この映画を観てしまうと、いろいろなキャラが実写化キャラの俳優さんでしか想像できなくなるぐらい。島田八段は佐々木蔵之介さん以外に考えられないし、二階堂の執事花岡も綾田俊樹さんがピッタリすぎる。高校の担任の林田先生も高橋一生がハマっているし。配役は実に見事。

 いろいろと文句も書いたが、後編もあるのでそちらも楽しみに観させてもらおう。