3月のライオン 後編

●400 3月のライオン 後編 2017

 新人王となった零は宗谷名人との記念対局が組まれることに。川本家の三日月堂では名物三日月焼きに変わる新作をひなたたちが考えていた。

 将棋会館で零は幸田が怪我をして入院していることを聞き、病院へ。幸田は家で転んで頭を打ったと話す。その病院には後藤の妻も入院しており、看護婦に文句をつける後藤を零は目撃する。家に帰った零の元に香子が訪ねてくる。香子は父のことを話し、怪我の原因は歩との喧嘩だったと打ち明ける。

 零は二階堂の執事花岡に誘われ二階堂の家へ。そこで二階堂から宗谷名人との対局について檄を飛ばされる。

 零は宗谷との記念対局に臨む。対局前夜、宗谷との対決に恐れをなしていた零の元に幸田から電話が入り励まされる。翌日記念対局が始まる。零は致命的な一手を指してしまい宗谷にその手を咎められる。それでも零は踏ん張るが結局負けてしまう。島田の家を訪れた零は島田から宗谷が耳が聞こえづらくなっている事実を知らされる。

 零は対局のお土産を持って川本家を訪れるが、そこへひなたがひどい格好で帰ってくる。彼女の友人が学校でいじめにあっており、かばったひなたもいじめの標的にされていたのだった。家を飛び出し川辺に泣くひなたの元へ零も追いかけていく。そこでひなたの話した私は絶対間違ってなんかない、という言葉に零は子供の頃に自身がいじめられていたことを思い出しそれがひなたの言葉で救われたと思う。家に戻ったひなたを相米二は褒める。零はひなたを守るために金を貯めようとするが、林田からそれは違うと指摘されひなたがどんな解決を求めているか聞いてみればとアドバイスされる。

 ひなたの学校でのいじめを黙認してきた教師がその現場に直面することになり、ついに心が病んでしまう。それがきっかけになり学校の教師たちはいじめ問題に真剣に取り組むことになり、ひなたのいじめ問題は解決する。夏祭りの日、零は三日月堂を手伝うが、その最中ひなたと話した零は彼女から手作りの人形を受け取り、いじめ問題が終わったことを知る。

 将棋会館で対局中の後藤の元へメモが渡される。対局中に後藤の妻が亡くなったのだった。葬式が行われ零も参列する。零はその帰り久しぶりに幸田の家を訪れる。そこで歩が部屋で引きこもっていることを聞く。

 川本家へ行った零はひなたたちの父親に会う。メールであかりからひなたのそばにいて欲しいと知らされた零は父親と対面する。帰って来たあかりの言葉に父親は退散する。その夜零は初めてあかりから父親のことを聞く。零は父親のことを調べ彼と対峙、家族の話だと言われた零はひなたとの結婚を考えていると話し、ひなたは気絶してしまう。零は獅子王戦トーナメントの準決勝に勝った後、父親がももの保育園に迎えに行ったとの知らせをもらい川本家に駆けつける。ちょうどそこへ父親がももを連れて戻ってくる。零は父親を罵倒するが、ひなたはそれでも私たちのお父さんなんだよと言われ、あかりからも今日は帰ってと言われてしまう。

 零はもう将棋しかないと覚悟を決める。

 香子は後藤の家に行くが、後藤から家から出て行くように言われてしまう。後藤は妻を亡くした今、将棋だけに打ち込めるんだと話す。家に戻った香子は父親に我が家は将棋に呪われていると話す。

 零は島田の研究会で獅子王戦トーナメントの挑戦者決勝戦の相手となった後藤対策をしていたが、集中できていなかった。川本家ではあかりが叔母と相米二に次の休みの日父親と出かけることにしたと話す。

 零は後藤の対局に臨む。川本家の3姉妹は父親と遊園地へ。幸田家では幸田が香子に将棋盤を使いある盤面を見せる。それは昔香子が零を叩いた局面だった。その局面では香子に勝ち筋があり勝っていたと幸田は教える。もう終わりだと諦め夢を手放したのは自分自身だ、将棋は誰からも何も奪ったりしないと話す。遊園地にいたあかりたちは父親に今日は最後の思い出を作るためだった、あなたとは一緒に暮らせないと宣言する。零は苦戦しながらも大逆転で後藤を倒す。対局を終えた零は感想戦もせず川本家へ走る。玄関でこれまでのことを謝る零を3姉妹は家に迎え入れる。

 獅子王戦に臨む零は幸田立会いのもと着物を準備する。そして幸田家へ行き歩の部屋を訪ね、獅子王戦を見に来て欲しいと誘う。そして獅子王戦が始まる…

 

 前編に続き後編を観た。去年観たときにも思ったが、今回改めて後編の後半は原作とは違うストーリーであると知らされた。

 後編での大きなエピソードは、宗谷名人との記念対局、ひなたのいじめ、3姉妹の父親との別れ、獅子王戦での宗谷名人との対決なのだが、父親とのエピソードが原作とは異なる展開であり、最後の獅子王戦での宗谷の対決は原作にはないものだ。

 ネットの感想でも多く書かれているが、父親と対峙した零がひなたやあかりにたしなめられる場面は原作にはないもので、零のキャラクターや3姉妹との関係性を原作とは全く違ったものにしてしまっている。原作のファンとしては大きな違和感を感じてしまう。

 また前編でもそうだったが、棋士たちの対局場面で、相手が指した直後に次の一手を指す場面が多かった。プロ棋士の対局を観ている人ならばこれも大きな違和感を感じるだろう。およそプロ棋士をナメていると思われても仕方ない。

 これではこの監督?は原作や将棋のことを本当に勉強してこの映画を作ったのかと疑いたくなってしまう。まぁまだ原作は継続中の状態で映画を作るとなれば、最後の獅子王戦でのVS宗谷は映画のラストとして仕方ないと思うが、前編後編を通じて、原作の持つ楽しくそして笑える零と3姉妹との関わりよりも、暗くシビアな零と香子や幸田家、後藤との関わりを多く描いてしまっているところはいかがなものか。まるで漫画「3月のライオン」のパラレルワールドの世界を見せられている気分になってしまった。「鬼滅の刃」が成功した理由の一つは、原作の持つ楽しさとシビアの振り幅をそのアニメや映画の中でしっかりと描いていたからだということを再認識させられた。

 前編でも書いたが、配役の上手さが素晴らしかっただけに、ストーリー展開がもったいないと感じる映画だった。