家康(四) 甲州征伐 安部龍太郎

●家康(四) 甲州征伐 安部龍太郎

 前作に続き4巻目。章立ては、遠州出陣、勝頼の罠、高天神城、落城、武田家崩壊、信長最後の旅。

 前作最後で信長から息子と妻の自害を命じられた家康が、二人を失う。そしてその仇である勝頼を倒し武田家を滅亡させる。信長の野望は着々と進行していき、信長は甲州から凱旋とも呼べる旅を始めるが、これが信長最後の旅となるのだった。

 

 本作の見所は、家康と息子信康の最後に交わされる会話か。この小説の中では母の手紙を理由に勝頼から脅されていた信康が…というのが、真相とされていて、それに関して家康が信康になぜ自分に相談しなかったと問う場面。家康は妻や息子の助命の嘆願をするが、信長に認められたなかったことや信康の言葉に心を痛める。これが戦国時代の怖さなのか、信長の怖さなのか。

 武田家の最後も非情。正直武士はなぜ負けるとわかっていても戦ったのかというのがこれまで疑問としてあったが、戦わずして逃げた武将の最後がどうなるかをこのように読むと命をかけて戦った武士の理由が少し理解できた気がする。

 もう一つこの小説で驚いたのは、信長の策略。日本を強い国にするために天皇も巻き込んで国づくりをしようとしていた考え。外交でも力を発揮し、万全の体制を築くように思われるが。

 

 いよいよ次は本能寺。信長の言動も気になるが、その時家康は何を考えたのだろう。