ななつのこ 加納朋子

ななつのこ 加納朋子

 加納朋子の駒子シリーズの第1作であり、7編からなる短編集。 

 短大に通う入江駒子は「ななつのこ」という小説のファン。この小説は主人公の少年はやてが体験する謎を知り合いの女性あやめが解くという話の短編集。駒子は彼女の身の回りで起きた不思議な事柄を「ななつのこ」の作者へ手紙で知らせると、作者である佐伯綾乃が見事にその謎を解いた返信をくれる。小説と同じように7つの謎が駒子の周りに起き、どれも作者である綾乃が解いてくれるが、最終話で驚きの事実が明かされる。

 

 各話ごとに駒子が読んだ「ななつのこ」の1編のあらすじが紹介され、その話にリンクした駒子の体験した謎が提示される、という「入れこ構造」になっている凝った仕掛け。さらに最終話で小説全体を巻き込んだ事実が明かされるというパターン。この本も倉知淳の「日曜の夜は出たくない」と同様、新本格派が動き出した頃の一冊であり、やはりこのような大仕掛けが流行り出した頃なんだろう。

 それでも「日常の謎」系のシリーズであり、肩の力を入れずに読むことができた。女性の著者でもあり、主人公が短大生ということも関係するのか、向田邦子さんのやんちゃ版のような文章も心地良い。ラストで明かされる謎のこともあるので、この本で完結しているのかと思ったら、シリーズ化されているらしい。続編でこの辺りをどう扱っているのか、気になるので読んでみたいと思う。