暗くなるまで待って

●410 暗くなるまで待って 1967

 若い女性リサは麻薬を仕込んだ人形を持ってケネディ空港へ降り立つ。しかしロートが待ち伏せしているのに気づき、人形を偶然知り合った男サムに渡す。

 詐欺師コンビのマイクとかカリーノは詐欺仲間であるリサからの連絡で受け取った住所の家を訪ねる。ドアに留守にしているので中に入ってというリサからのメモがあり、二人は家の中へ。家の中に人はおらず二人は家の中を調べて回る。タイプライターを打った痕跡があり、リサはタイプできないはずだと気付いた二人は家から逃げようとするが、その時家に男が一人入ってくる。男はロートだと名乗り、二人のことや二人とリサが詐欺を働いていた仲間であること、カリーノは元刑事であること、二人が警察に捕まり刑務所暮らしをして出所したところであること、などを知っていた。

 ロートは二人に人形を探して欲しいと話す。マイクはそれが麻薬がらみであることに気づく。ロートはリサが麻薬を隠した人形をサム・ヘンドリックスに預けたこと、この家がヘンドリックスの家であること、この家の中を探したが人形が見つからないこと、を告げる。マイクは部屋の奥のクローゼットが開かないことを不審に思い、ロートが鍵を持っているはずだと主張し、鍵を奪いクローゼットを開ける。そこにはリサの死体があった。マイクとカリーノは逃げようとするが、ロートは家の中に指紋が多く残っているから逃げられないことを告げる。そして協力すれば問題ないと話し、リサの死体を他の場所に移そうとする。

 その時この家の住人でサムの妻スージーが帰ってくる。3人は驚き隠れるが、スージーは盲目のため3人の存在に気づかなかった。スージーは夫で写真家のサムに電話し、彼の仕事が遅れると聞き、コーヒーショップで待っていると告げ、家から出て行く。3人はリサの死体を片付ける。

 翌日スージーはサムに近所で見つかった女性(リサ)の死体の話をする。サムはその日夜遅くまで仕事だった。二人はサムが預かった人形がなくなったことを話す。サムはアパートの2階に住む少女グロリアに探すのを手伝ってもらえと話すが、スージーはグロリアがサムに惚れていることを理由にそれを断る。サムは仕事に出かけて行く。

 家をマイクが訪ねる。その時家の中ではサムが消したタバコの火が燃え上がりスージーがパニックを起こしていた。マイクはサムの友人だと話し家の中に入り、タバコの火を消す。マイクはスージーが盲目になった理由を聞く。そしてまた来ると言い残し去って行く。その際、マイクはグロリアと出会う。グロリアが家に来る。グロリアはスージーの代わりに買い物をする約束だったが、二人は些細なことでケンカをしてしまうが、仲直りする。グロリアが買い物に行こうと家を出た時に、サム・ハントを探して男がやって来る。彼は息子の嫁がサムと不倫をしていると騒ぎ家の中を探し回る。そしてサムとスージーの写真を持ち出し家彼出て行く。その直後マイクが忘れ物をしたと言って戻って来る。スージーがマイクに事情を説明すると、マイクは警察を呼んだ方が良いと言って外の公衆電話に電話する。カリーノが刑事としてやって来る。操作をしたふりをしながら家の中の指紋を消す。そこへ警察(ロート)から電話が入り、カリーノは近所で女性の死体が見つかったことなどを話し、スージーの夫サムを疑うような口調でスージーを詰問するが、マイクが庇いカリーノは去って行く。スージーはカリーノが家の中を拭いていたことに気付いていたことをマイクに話す。そこへハリー・ロートと名乗る男(ロート)がやって来る。先ほど来た老人は自分の父で、自分の妻がサム・ハントという写真家と不倫していると疑っている理由と、先日ロート夫人は父とケンカして家出をしたがその際音楽のなる人形を持って出て行ったこと、そして昨夜妻リシアナは外泊をしたことを話す。リシアナという名前は、昨日スージーがサムから聞いた仕事で待っている女性の名前だった。そこへ警察から電話がロートにかかりリシアナが死んだと告げられる。

 全ての話を信じてしまったスージーは、サムが人形を持ち帰って来た経緯をマイクに話す。マイクは話を整理し、ロートの父が家に入って来て何か持って行かなかったかを尋ね、スージーは結婚写真がなくなったことを話す。マイクは警察に電話しようとするが、話を信じているスージーはサムが警察に捕まることを恐れ、警察への通報は見合す。マイクは家の外にパトカーがいるとスージーに話す。

 マイクとスージーは家の中で人形を探し始めるが見つからない。スージーはおかしいことがあると言い出す。ロートの父と息子が同じ靴の足音がしたこと、ロートもカリーノ刑事も夕暮れなのにブラインドに触ったことをマイクに告げる。さらに電話がタイミング良くかかって来たこともおかしいと話す。マイクは飛行機の時間だと話し家から出て行こうとするが、スージーから連絡先を教えて欲しいと頼まれ外の公衆電話の番号を告げる。

 グロリアがそっとスージーの家へ入って来て、人形をソファの下に隠す。スージーはグロリアに家の外にパトカーが止まっているか尋ねるが、グロリアはワゴンしか止まっていないと答える。そしてカリーノ刑事が窓から覗く。その際グロリアは人形の音楽を鳴らしてしまう。人形はグロリアがちょっと借りていたのだった。スージーは人形を洗濯機の中に隠し、グロリアに家に戻って外の公衆電話からワゴンの男が電話をしたら、家の電話を2回鳴らすよう頼む。グロリアは助けが必要な時は水道管を鳴らしてと答え家に戻る。

 家にカリーノ刑事がやって来る。彼はサムとロート夫人のことを話し、人形のありかをスージーに尋ねるが彼女はとぼける。スージーは警察に電話をしようするが、カリーノが止め自分が公衆電話にかける。スージーはロートにこれ以上夫のことを侮辱すると訴えると話す。電話を切るとベルが2回鳴る。カリーノは令状を持って来ると家を出る。

 スージーはマイクに教えられた番号に連絡し、人形が見つかったと話す。しかしまた電話のベルが2回鳴る。全てに気づくスージー。警察に電話をしようとするが、マイクが家に来る。スージーは人形はサムのスタジオにあると嘘をつき、マイクを外へ。スージーはグロリアを呼ぶために水道管を叩く。そしてサムの乗るバスを待って事情を説明して欲しいと話す。グロリアは外へ。カリーノが見張っていたが難なく外出に成功する。

 スージーは警察に電話をしようとするが、電話線がロートにより切られていた。絶望した彼女だったが、家中の電灯の電球を外すか壊すかして暗闇に。暗室の照明だけをつけ、花瓶に定着液を仕込む。

 カリーノとロートは駐車場へ。マイクが一人家にやって来て、人形はなかったと話す。マイクは人形を出すようにスージーに言うが彼女は答えなかった。マイクは諦め、女性殺しにサムもスージーも関係ないし、我々3人とも無関係だと話すが、スージーはロートだけは違うことを考えていると恐れる。その頃駐車場ではロートがカリーノを車で轢き殺していた。マイクは何もなかったことにして家から去ろうとするが、玄関のドアでロートに刺し殺されてしまう。ロートはガソリンを巻きスージーを脅して人形のありかを聞き出そうとする。スージーは一瞬の隙をついて花瓶の定着液をロートにかけ、唯一の灯だった暗室の照明も壊す。真っ暗闇になるが、ロートは持っていたマッチをつけ反撃に出る。しかしスージーはガソリンのタンクを持ち、ガソリンをロートに向かって撒き散らし反撃、ロートからマッチとナイフを奪う。真っ暗闇の中、スージーは家から逃げようとするがドアはロートがチェーンで開かないように固定していた。ロートは冷蔵庫のドアを開け、その照明で視界を得る。そして人形を渡すように指示、スージーは人形を渡す。ロートが人形から麻薬を取り出している隙に台所の包丁を隠し持ったスージーはロートをそれで刺す。それでも家からは出られず叫んでいると怪我を負ったロートがスージーを襲おうとする。冷蔵庫のそばに逃げたスージーは扉でガードしつつ、冷蔵庫のコンセント抜いて暗闇を取り戻す。

 サムがパトカーで家に急行、そこで見たのは冷蔵庫のドアに隠れたスージーだった。

 

 子供の頃に観た記憶があるが、暗闇の中で悪いヤツと戦うオードリーの印象しかなかった。改めて観ると、舞台劇が原作であることがよくわかる。ほぼスージーの家の中だけで話が進むが、冒頭での説明不足でちょっと最初はストーリーに追いつけなかった。

 まず冒頭、2人組の詐欺師がロートに手玉に取られ、女性の死体の片付けから人形探しまで手伝わされるハメになるが、なぜ女性リサ=麻薬の運び屋であり、麻薬をガメようとした女性、の死体があの家にあったのかの説明がない。ただでさえ、謎めいた冒頭の3人の会話だったので、最初あの家がリサの家なのかと思ってしまっていた。なので、そこへオードリーが現れて、頭の中はハテナとなってしまった。飾ってある写真がリサではなく、オードリーのものなので余計に不思議に思った。

 ネットでの説明を読むと、人形を預けた男性サムをリサとロートが探し出し、あの家に行き、そこでロートがリサを殺したということのようなのだが。

 

 ただ、ここからの3人組の芝居〜オードリーに人形を渡させるための筋書き、は見事なもの。ロートの2役(父と息子)も見事だし、自分たちが殺した女性の名前と夫サムに待ちぼうけを食らわせる客の名前が一緒なのも見事。

 もちろん、盲目でありながら、3人組(オードリーからは、父、息子とマイク、刑事の4人組と思えていた?)を怪しいと睨むオードリーの観察力も見事。足音、ブラインドの音、グロリアに頼む公衆電話の件など。もちろん、盲目の女性を演じたオードリーも見事であることは間違いない。

 

 先日観た「麗しのサブリナ」や名作「ローマの休日」が、今風に言う「アイドル」としてのオードリーならば、本作はこれまた今風に言う「演技派」としてのオードリーといったところなのだろう。残念なのは、本作を最後に第一線からオードリーが去ってしまったことか。