魔法飛行 加納朋子

●魔法飛行 加納朋子

 加納朋子の駒子シリーズの第2作であり、4編からなる短編集。

 前作で正体?が明かされた瀬尾へ主人公駒子の手紙が書く形で小説を書き始める。題材は前作と同様、彼女の周りで起きた不思議な出来事。学校で知り合った偽名を使う女性、美容院で聞いた事故現場の幽霊話、学園祭での双子のテレパシー実験。この3件に加え、最終章では「謎の手紙の謎」が解き明かされる。

 

 前作で正体がバレてしまったため、どのような続編になるかと思いきや、そこは正直にバレた相手に同じように謎を書き綴る主人公駒子。最初の3編は正直なんとなく謎解きがわかってしまうようなものだったが、読者としての興味はそこにはなく、各章の最後に付けられている謎の短い手紙。その手紙は、まるで我々読者を思わせるような書き手であり、読んでいる最中は、ひょっとして推理小説の最大の挑戦である「読者を小説に引き入れる」大技に作者が挑戦でもしているのか、と錯覚してしまった。

 

 しかし最終章でその「謎の手紙の謎」が解き明かされる。しかもそこまでの3章が見事な伏線となっていてさらに驚かされる。前作も「入れ子構造」を使った凝った作りの短編集だったが、本作はそれをはるかに上回る出来。このブログを書き始めてから数十冊の推理小説を読んできたが、伏線回収の鮮やかさではNo. 1と言える。有栖川有栖さんの解説もついており、こちらも謎解きではないが、本作の素晴らしさを見事に言語化していて気持ちの良い解説となっている。

 こんな傑作を読んでしまうと、このシリーズの次が読みたくなってくるのは当然だよなぁ。