家康(六) 小牧・長久手の戦い 安部龍太郎

●家康(六) 小牧・長久手の戦い 安部龍太郎

 前作に続き6巻目にて現時点でのシリーズ最終作。章立ては、変の真相、甲州合戦、北条との和解、近衛前久、宿敵秀吉、家康圧勝。

 本能寺の変直後、命からがら三河へ戻った家康。その後配下の者からの情報で変の真相を知る。秀吉は変が起こること=信長の死、を知りながらそれを見過ごし、光秀を討つことに全力を注いだと知る。

 信長が討たれたため甲信の地が争いの地となり、家康はその地の安定へ全力を挙げる。同時に秀吉が畿内で怪しい動きをし始めたため、最大の敵であった北条と和解、秀吉の独走を許さないために秀吉との戦いを決意する。

 

 前作では、本能寺の変が起きたため、家康が三河へ逃げ帰る場面で終わったが、本作では本能寺の変の真相を家康が知ることになる。未だに結論づいていないこの問題に対し、本作では朝廷陰謀説が取られ、秀吉がその証拠を掴み朝廷を揺さぶる、というストーリーになっている。

 現在、同時に「本能寺の変431年目の真実」という本を読んでいたり、NHKBSで再放送された「本能寺の変サミット2020」も見ていたりして、本能寺の変にまつわる様々な仮説を知ったが、本作の説も相当な説得力があると読んでいて思ってしまった(先にあげた本や番組では否定されていたが)。

 

 本作は、小牧・長久手の戦いの序盤で話が終わっている。この後、秀吉と家康の戦い、秀吉に天下取りで先を越されてしまった家康の心情やその後の家康について、まだまだ読みたいところである。

 シリーズの続編が早く書かれることを望む。