オリエント急行殺人事件

●411 オリエント急行殺人事件 1974

 1930年、富豪アームストロング家の娘が誘拐され身代金を払ったが、娘は遺体で発見される。

 1935年ポワロは事件解決後、オリエント急行でロンドンへ行こうとするが、座席が満席であった。しかし知り合いの鉄道会社の重役のおかげでなんとかオリエント急行に乗車する。

 乗車2日目の夜、列車は雪のため立ち往生することに。翌朝会社経営から退いたラチェットが寝台個室にて死体で発見され12箇所の刺し傷が見つかる。ポワロは遺体のそばにあった燃やされた紙に5年前に殺されたアームストロング家の娘の名前が書かれていたことを発見する。会社重役の依頼を受け、ポワロは寝台車両に乗っていた乗客から事情聴取を始める。

 ラチェットの遺体にあった壊れた時計から犯行時刻、ラチェットが本名カセッティであることが判明、ガウンを着た謎の女性、車掌の衣装や取れたボタン、犯行に使われたと思われるナイフなどが見つかる。

 ポワロは乗客全員の事情聴取を終え、真相を語り出す。

 

 昨年秋に2017年版のリメイクを観ているが、その時感じたことが勘違いだったことが判明(ポワロが事件前夜眠り薬を飲まされたため、犯行に気づかなかったこと)、ブログを修正した。

 映画は130分、最初の30分でざっと乗客全員を見せておき、そこから10分で死体が発見される。中盤の60分を使い、乗客の証言を聞き、最後の30分ほどで謎解きとなる。2時間越えの映画だが、全く飽きさせない展開。

 この時の手法がのちに使われることになったそうだが、謎解きの場面で乗客各人の証言をVTRのように繰り返すのが非常にわかりやすく、再度観たときにその場面を注目してしまう。

 また謎解き冒頭でポワロが真相ではない「もう一つの仮説」を話す際、一気にまくし立てる場面は圧巻。それが真実ではないことを知りながらも話さなければならないポワロの怒りを感じさせるシーンである。

 もちろん「真相」を語るポワロの口調も素晴らしい。12名の容疑者を次々とねじ伏せて行き、アームストロング家との関係を暴いて行く。そして真相を知りながらも、警察には「もう一つの仮説」を報告することに同意するポワロの優しさ。見事な結末であり、その後の乗客同士の乾杯シーンも事件解決後のシーンとしてふさわしい。

 

 それでも、負け惜しみのようだが、2017年版のリメイクを観たときに感じた勘違いは本作でも同じことを思ってしまった。なぜポアロは12名による犯行の騒ぎ?に気づかなかったのか。それとも本作でのその点を気遣って「ナイル殺人事件」では、薬を飲まされたことにしたのかしら?

 

 しかしやはり本作は俳優陣があまりに豪華。はっきりわかる人から、名前を観てわかる人までとにかく豪華。中でも犯人の中でも主役級の扱いだったローレン・バコールはアームストロング夫人の母親だったのね。今回観て初めて納得した。謎解き終わりでポワロの話を聞いて喜び、思わず立ち上がってしまうアンソニー・パーキンスの表情は最初観た時から忘れられない。今回観て改めて気づいたもう一つの点は、「5年前」がキーワードになっている点。あぁだから、映画冒頭でアームストロング家の誘拐事件が1930年だと念押ししているのね。

 

 リメイクの方でも書いたが、やはり本作はミステリー映画の最高峰だと思う。オールスターキャスト、豪華な舞台、見事な謎解きと犯人。あとは見終わった後に、昔の「日曜映画劇場」のテーマが流れれば言うことなしかな(笑