幻獣遁走曲 倉知淳

●幻獣遁走曲 倉知淳

 倉知淳の猫丸先輩シリーズの短編集2作目、長編があるためシリーズとしては3作目。

 「猫の日の事件」「寝ていてください」「幻獣遁走曲」「たたかえ、よりきり仮面」「トレジャーハント・トラップ・トリップ」の5編。

 短編集としての前作「日曜の夜は出たくない」に比べると、肩の力が抜けたものとなっている。「日常の謎」シリーズであるのは変わらないが、その舞台設定があまりに独特で笑ってしまう。

 各短編の舞台となっているのは、

 「猫の日〜」はペットのコンテスト会場

 「寝ていて〜」は新薬の治験の医院

 「幻獣〜」は幻の生物の探索の場

 「たたかえ〜」はヒーローショーの舞台裏

 「トレジャー〜」は松茸がりができる山奥

 およそ推理小説の舞台となるにはふさわしくない(笑 場所ばかり。それでもそこでちょっとした謎が提示されて、なぜかその場所にいる猫丸先輩が見事に謎を解く。深刻な謎が少ないのと、猫丸先輩も初めての場所が多いため、いつもの毒舌が鳴りを潜めているため、ホント気楽に読めてしまう。

 それぞれの謎やトリックについては、相変わらずちょっと首をひねるものも多かったが、「幻獣〜」の謎解きは良かった。舞台設定が独特すぎるのが惜しいぐらいで、普通の舞台設定ならば、なるほどと感心するような動機だと言って良いだろう。

 

 凝った作りの1作目の短編集、推理小説の王道を行った2作目の長編、と来てのちょっとふざけた舞台設定ばかりの3作目の短編集。この先のシリーズがどこへ向かうのか、次作も当然読んでみたくなる。