スペース 加納朋子

●スペース 加納朋子

 加納朋子の駒子シリーズの第3作。2章立ての長編。

 1章では、前作終わりのクリスマスから1週間ほど経った大晦日、駒子は瀬尾さんと意外なところで会い、手紙を読んで欲しいと頼む。その手紙とは10数通ある一方通行の手紙だった。そこに書かれた手紙の謎を瀬尾さんが鮮やかに見抜く。

 2章では、前章で書かれた手紙の書き手目線で、手紙に書かれた時期の生活が描かれる。手紙で書かれた内容はもちろん、手紙には書かれなかった内容、気持ちも時系列で描かれて行く。1章で読んだ手紙の内容を別角度で改めて見直すことになるが、そこには意外な謎が隠されていた…。

 

 前作「魔法飛行」から11年後に書かれた第3作。前作があまりに傑作だったため、期待して読んだのだが、これは期待はずれと言わざるを得ない。2章立ての1章目は、手紙が主となる。駒子が瀬名さんに読んで欲しいと言った後に記載される手紙のため、当然駒子の書いたものと思い読み始めるが…。あちらこちらに駒子ではないと思われる記載があり、どうやらこれは駒子ではない人間が書いた手紙だと気づく。そして瀬名さんによる謎解きへ。あーなるほど、と思える内容。

 2章目は駒子ではない主人公目線で話が進んで行く。そして意外な再会があり、1章目のラストで瀬名さんが説いた謎解きの真実が描かれる。さらにラストではシリーズに関わる大きな謎が明かされる。2章目のための前振りとしての1章目、といった感じ。そこで2つの謎が明かされるのだが、どちらもそこに必然性はなく、読者を驚かせるためにだけ作られた謎のように感じてしまい、驚きはあったが、あまりに都合の良すぎる展開だと思ってしまった。

 うーん、期待していただけに残念。