フィールド・オブ・ドリームス

●414 フィールド・オブ・ドリームス 1989

 レイ・キンセラは36歳。アイオワで妻と子供と暮らし、妻の提案でトウモロコシ農場を営んでいた。ある日彼は「造れば彼がやってくる」という声を聞く。妻や知り合いにもそのことを話すが、皆彼のことを変な目で見始める。しかし彼はその声を何度も聞くことに。言葉の意味がわからなかったが、彼は農場に野球場とシューレスジョーの幻影を見て妻に野球場を作る計画、父親は夢を何も実現できずにいたこと、父のようにはなりたくないことを話す。妻も計画に賛同する。

 レイは農場を潰し野球場を作り始めるのを見て近所の人々は呆れる。野球場は完成するが、何も起こらずに月日が経つ。

 農場を潰したことでキンセラ家の家計は苦しくなってくる。そのことで夫婦喧嘩をしている時に娘が野球場に人がいると話す。外へ出て見るとそこにはシューレス・ジョーがいた。レイは彼と野球をする。ジョーは野球界を追放されて以来初めて野球をしたと話し、仲間8人を連れてくると約束してトウモロコシ畑に消えて行く。

 翌日妻の家族が農場を潰したことで家計が苦しくなったレイ達を心配してやってきて、農場を売れと話すがレイは断る。外ではジョーが仲間を連れてやってきていた。妻の家族は帰る際に野球場を見にくるが、彼らには選手達の姿が見えていなかった。

 そこでレイは「彼の痛みを癒せ」という声を聞く。彼はまたも意味がわからずにいた。妻が娘の学校で開かれるPTAの集会に参加しレイも付いて行く。そこではテレンス・マンの本が有害図書としての扱いを受けており、妻は反対意見を述べる。レイはそこで「彼の痛み」の彼とはテレンス・マンであると考え、彼のことを調べ始める。妻は家計状況も鑑み反対するが、夫婦で同じ夢も見ていたことを知り賛成する。そしてレイは彼に会いにボストンへ行くことに。

 なんとかマンに会えたレイだったが、彼は自分の過去の著書のことで苦しんでいた。レイはマンを野球場へ誘う。そこでレイは「最後までやれ」という声を聞き、スコアボードに「アーチボルト・ムーンライト・グラハム ミネソタ州チザム 1922年」という選手のデータが表示されるのを見る。レイとマンは野球場を後にする。レイはマンを送ろうと考えるが、マンも声を聞き、スコアボードの表示を見ていた。二人は一緒にミネソタ州のチザムへ行き、グラハムを探し始める。

 地元紙の事務所やグラハムの知り合いから、グラハムがもう死んだこと、晩年は地域の人々に愛される医者として活躍していたことを知る。二人はモテルに泊まる。そこで新聞にマンの父親がマンのことを探している記事を見つけ、マンは電話をすることに。レイは街へ散歩に出かける。レイはそこが1972年の街であることに気づく。そして歩いているグラハムを見つけ声をかけ、彼の診療所へ行き話を聞く。グラハムはメジャーの選手となったが、1試合しか出場せず打席には立てなかったことを悔やんでいると話す。レイは彼を自分の球場へ誘うが、グラハムは今の生活が大事だと断る。

 レイはモテルに帰り事情を説明、なんのためにここに来たのかと話すが、マンは「1イニングが人生を変えた実例を見に」来たと説明する。グラハムがヒットを打っていたら、野球を続けここにはいなかったと話す。マンはレイの妻から連絡があったことを告げる。レイが家に電話すると弟が農場を売らないとここに住めなくなると言われたと告げる。レイは家に帰ろうとするが、マンが一緒についてくる。

 二人はレイの家へ。途中ヒッチハイクする若者を乗せる。彼は野球をやりたがっており、名前はアーチー・グラアムだと名乗る。

 レイ達が家に帰ると野球場にはジョーが多くの仲間を連れて来ており、試合をするところだった。グラハムもジョーに言われ試合に加わる。そして打席に立ち、犠牲フライで1打点をあげる。

 翌日野球場で試合が行われる中、妻の弟がやって来て農場を売るように催促、レイは断る。二人は口論となるが娘がみんなが野球を見に来て入場料を払うから大丈夫だと話す。弟とレイはさらに口論をし、その際娘が観客席から落下し気絶してしまう。救急車を呼ぼうとする妻をレイは止める、若きグラハムが老いた姿に戻り観客席へやって来て娘を診察、娘は意識を取り戻す。それと同時に弟にも選手達の姿が見え始め、彼は農場は絶対に売るなと前言を撤回する。グラハムは老いた姿のままトウモロコシ畑に去って行く。

 ジョーが今日はここまでだと話し選手達と去って行く。その時ジョーはマンに声をかける。自分も一緒にと望むレイだったが、招かれたのはマンだけだった。マンは向こうの世界のことを書くと話しトウモロコシ畑に去って行く。

 最後にジョーも去って行くが、その時グラウンドに一人の選手が。それはレイの父親だった。二人は言葉を交わしキャッチボールを始める。

 

 随分と昔に見た記憶があり、コスナーが天啓を受け野球場を作ってシューレスジョーが来る話だったなぁ、と思い出していたら、それは冒頭の20分で終わってしまった(笑

 ここからは完全にファンタジーの世界なのだが、テレンス・マンに会いに行く下りが現実の世界に引き戻してくれる。自分の過去の著書のことを悔やんでおり、人との接触を拒んでいるマンがあまりにリアル。しかし野球場でレイと同じ声を聞きレイの探索に加わり、またファンタジーの世界へ入って行く。

 グラハムのエピソードが現実とファンタジーのバランスを上手く取っている。老人グラハムは、メジャーリーグでの夢と現実を語り、さらに医者としての人生を大切にしている。レイの誘いも断り、映画としての展開がどうなるのかと思っていたら、若者グラハムが登場、ジョー達とプレーを一緒にする。老人グラハムはバート・ランカスターなのね。このブログでは「アパッチ」ぐらいしかまだ見ていないけど、子供の頃から名前だけはよく知っている俳優さんだ。

 バランスという意味では、レイの農場を売るように促す弟のエピソードも良い。農家が農場を潰してやっていけるわけないもんなぁ。しかも弟には選手達が見えていないという設定も良く、最後に弟にも選手達が見えたシーンはレイの妻と同様、笑いが起きる。

 全体を俯瞰して見れば、「大人のおとぎ話」になってしまいそうな話だが、アメリカ人にとっての野球がどれだけ精神的に大切であるかが根底にあるので、ギリギリ名作になっている。コスナーが出演する映画はいつでも良いテーマを持っている。

 途中のセリフも良い。妻がジョーを見たレイに「コーヒーを入れておくわ」と話すシーン、娘を治療しトウモロコシ畑に去って行く老人グラハムにジョーが「ナイスプレー」と声をかけるシーン。センスの良さがわかる。

 

 今年(2021年)夏、映画製作から20年以上が経っているが、MLBであの野球場の脇に本物の野球場を作り、本物のMLBの試合が行われたようだ。さすがアメリカ、といったところか。