運び屋

●415 運び屋 2018

 2005年アールはデイリリーを育てる農家で、品評会で受賞をする。しかしその日は娘アイリスの結婚式の日であり、品評会を優先させたアールに家族は皆絶望する。アールはこれまでアイリスの卒業式などにも一度も出席したことがなかったのだった。

 12年後の2017年、ネット通販が普及したためアールの農場は破綻、家も差し押さえられてしまう。家を失ったアールは孫娘ジニーの家へ行き、彼女の結婚式前のブランチに参加しようとするが、そこへ来た元妻メアリーや娘のアイリスに拒絶され、ジニーの家から去ろうとする。そこへパーティーの出席者リコが街から街へ走るだけで金になる仕事を紹介すると連絡先を渡す。

 アールは紹介された場所へ行く。ブツを見ないこと、渡された携帯で連絡を取ることを条件に運び屋をすることになる。指定されたホテルに車を止め、1時間後に戻るとグローブボックスに車のキーと報酬が入っていた。その場で男からまた仕事がしたかったら連絡しなと言われるが、アールは一度きりの約束だと断る。しかし連絡先だけは受け取る。

 その頃麻薬取締局DEAでは麻薬取り締まりのために新しい捜査官ベイツが赴任、調査を開始する。彼は組織の末端にいるルイスという男を脅し捜査に協力させる。

 アールは受け取った報酬を孫娘ジニーの結婚式のパーティー代に使いパーティーに出席する。ジニーには感謝されるが、元妻メアリーはアールのことを許していなかった。

 アールは車を買い替え、2回目の運び屋をする。報酬で差し押さえられた家を買い戻す。行きつけだった退役軍人クラブへ行くと火事のため閉鎖されていた。そこで2万5000ドルあれば再建できると言われ、アールは3回目の運び屋をする。途中アールは初めて運んでいるブツが何かを確認、麻薬であることに気づく。その時パトロール中の警官に声をかけられるが、なんとかごまかし難を逃れる。

 その頃ベイツ捜査官はルイスから取引に使われているホテルの情報を得る。まさにアールがブツを届けているホテルだった。アールは報酬を退役軍人クラブの再建に使う。

 アールは運び屋の仕事を順調にこなし5回を数えていた。

 その頃組織のボス、ラトンは部下フリオを呼び出しアールに大きなブツを運ばせるよう指示する。フリオはアールに厳しく接し自分の命令を絶対に聞くように指示するが、アールはフリオを恐れなかった。ブツが大きいため、フリオはアールを尾行するが、その8回目の仕事でも、アールは途中パンクした車を手助けしたり、モテルに一泊したりする。さらに指示された場所とは違う場所へブツを届けようとし、慌てたフリオが相手を説得する。怒ったフリオはボス、ラトンに連絡するが、ラトンはアールが老人であるため仕事が上手くいっていると話し、アールを楽させてやれと話し、フリオは渋々納得する。

 ベイツ捜査官はルイスから運び屋のルートと黒い車である情報を仕入れる。

 9回目の仕事。アールは途中、白人しかいない店で食事をしフリオたちを誘う。店から出たところでフリオたちは警官に尋問される。しかしアールが自分の引越しの手伝いだと話し警官を納得させる。

 その頃ベイツ捜査官はブツの到着時間を知り、ハイウェイで怪しい黒い車を一斉に検問する。それでもアールは仕事を成功させる。

 アールは組織のボス、ラトンに招かれ彼の屋敷へ連れて行かれる。女をあてがわれ楽しんだアールだったが、フリオに組織を辞めるべきだとアドバイスするが、彼は聞く耳を持たなかった。

 ベイツ捜査官はブツのあるアジトを一斉捜索することに。

 アールは孫娘ジニーの美容学校の卒業式に出席、元妻メアリーと言葉を交わす。その時メアリーは体の不調を訴えアールは心配するが、すぐに治るとメアリーは話す。

 組織のボス、ラトンは部下グスタボに殺される。グスタボはラトンの甘いやり方に我慢できず、自分がボスとなることに。グスタボはフリオにアールの仕事をもっと厳しくさせるよう命じ、新しい監視役をつけることに。新しい監視役はアールを連れ出し、今後は時間厳守、命令の絶対服従を告げ、守れない場合は殺すと話し、それまでの監視役の死体を見せる。アールは命令を受け入れる。

 アールは次の仕事、12回目の仕事を請け負う。しかしベイツ捜査官も運び屋のルートや時間を入手していた。さらに運び屋がエイブ・モテルに泊まることも知りモテルへ。アールもそこに泊まっていたが、捜査官たちは別の男を怪しいと睨み逮捕する。翌朝、モテル脇のコーヒーショップでアールはベイツ捜査官と話をする。アールは仕事より家族を大切にしろとアドバイスをして別れる。

 車で走り出したアールの元へ孫娘ジニーから連絡が入る。元妻メアリーが危篤であると知らされすぐ来て欲しいと言われるが、アールは仕事があるため行けないと答えジニーはアールを非難する。アールは仕事を中断し、メアリーの家へ。最後の時間を過ごし、彼女を看取ることに。

 その頃組織では消えたアールを探していた。警察も彼を追っていたが、組織が彼が消えたことで焦っていることを知る。

 ベイツ捜査官はルイスから運び屋が120万ドルのブツとともに1週間以上姿を消していることを聞く。ベイツは運び屋を追っている組織の2人組を追うことに。

 メアリーが亡くなり葬式が行われる。アールは娘アイリスと和解する。アールがハイウェイを走っているのを組織の監視役が見つけ、アールを確保する。アールが元妻の葬式に出席していたことを知り、ボスであるグスタボに連絡する。ボスはアールを殺すように指示するが、監視役はもう一度走らせてはと提案、ボスも了承する。

 走り出したアールの車をベイツ捜査官が発見、確保する。ベイツはあんただったのかと呟く。アールの裁判が行われる。弁護士の発言中にアールは自ら有罪であると宣言する。娘アイリスに見送られ彼は刑に服する。

 

 イーストウッドの現時点での最新作から2つ前の監督作品。出演となると1つ前で6年ぶりの出演作のようだ。

 イーストウッド晩年の出演作というと、「ミリオンダラー・ベイビー」や「グラン・トリノ」の印象が強く、どちらも物語後半に予想外の大きな展開が待っていたが、本作はこちらの思っていた通りの展開で、なんとなく安心して観ることができた感じ。

 自分が好きな趣味のような仕事だけで生きて来た男が、晩年に家族の大切さに気づく、という本当にありがちなテーマ。話もその通りに展開していく。家族との繋がりを保つためにヤバい仕事に手を出すため、警察沙汰になりそうなスリルと組織に狙われるスリルがストーリーを盛り上げるが、新しくなった監視役が元妻の葬式に出ていたと告白するアールに同情しボスにもう一度運び屋をさせて欲しいと願うシーンでアレレとなってしまった。これでは何のための前振りか。死体まで見せたのに(笑

 まぁ先に書いたようにイーストウッドは「家族愛」を描きたかったのだろうから、この辺りは仕方ないんだろう。逮捕後のベイツ捜査官との会話や、裁判後の娘との和解などが一番描きたかったんだろうからなぁ。

 

 途中ちょっとハラハラさせるシーンもあった。フリオたちが警官に声をかけられアールが見せたいものがあるとトランクを開けるシーン、見せたかったものはブツではなくポップコーンだったけど。ベイツ捜査官とコーヒーショップで話し店を去ろうとした時にベイツから声をかけられるシーンも。アールが水筒を忘れただけだったけど。

 これもきっとイーストウッドのジョークなんだろう(笑