●猫丸先輩の推測 倉知淳
倉知淳の猫丸先輩シリーズの短編集3作目、長編があるためシリーズとしては4作目。
「夜届く」「桜の森の七分咲きの下」「失踪当時の肉球は」「たわしと真夏とスパイ」「カラスの動物園」「クリスマスの猫丸」の5編。
前作に続いての短編集。前作の舞台設定があまりにも独特だったのに対し、本作の舞台設定は少し「日常の謎」っぽくなっている。
各短編の設定は、
「夜届く」〜なぜか夜遅くに届く差出人不明からの電報
「桜の森の七分咲きの下」〜花見の場所取りに借り脱された新人社会人
「失踪当時の肉球は」〜ペット探偵が迷子猫の捜査を依頼される
「たわしと真夏とスパイ」〜商店街の夏祭りで起きるちょっとした嫌がらせ
「カラスの動物園」〜動物園で見かけたひったくり犯
「クリスマスの猫丸」〜クリスマスイブの日、走り去る3人のサンタクロース
それでも提示される謎は不可思議なものばかり。
「夜届く」で届く電報内容は嘘ばかりだし、話の主役ばかりでなく近所の老人にも同じ目にあっている人がいることがわかるし。
「桜の森の七分咲きの下」の新人君が待機番をしている場所を奪おうとする人々が次々と現れるし。
「失踪当時の肉球は」では、依頼された探偵が貼った迷子猫の看板の写真が短時間で全て塗りつぶされるし。
「たわしと真夏とスパイ」では、夏祭りの屋台で営業不能とまではいかないちょっとしたイタズラが次々と起こるし。
「カラスの動物園」では、ひったくり犯からハンドバッグや財布を投げ渡され事件に巻き込まれるが、ひったくり犯は盗んだであろうお金を持っていないし。
「クリスマスの猫丸」では、夕方街中をサンタクロースの格好をした男が次々と一方向に走って行くのが目撃されるし。
これらの謎を例によって猫丸先輩があっという間に解決して行く。これまた例によって、多少強引と思われる謎解きも多いが、「夜届く」では、なるほど、と思わせる動機が提示される。「失踪当時〜」と「クリスマス〜」は、ある程度予想ができる謎解きだった。
独特の展開が多い猫丸先輩シリーズ。まだまだ続きを読みたいと感じさせる一冊。
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