猫丸先輩の空論 倉知淳

●猫丸先輩の空論 倉知淳

 倉知淳の猫丸先輩シリーズの短編集4作目、長編があるためシリーズとしては5作目。

 「水のそとの何か」「とむらい自動車」「子ねこを救え」「な、なつのこ」「魚か肉か食い物」「夜の猫丸」の6編。

 今回は前作「猫丸先輩の推測」のまさに続編といった感じで、引き続き「日常の謎」バージョンといったところ。

 各短編で示される謎は、

 「水のそとの何か」〜家のベランダになぜか毎日置かれる水入りペットボトル

 「とむらい自動車」〜人気のない場所に次々と呼ばれるタクシー

 「子ねこを救え」〜野良猫がお婆さんに虐待されていると感じた少女

 「な、なつのこ」〜スイカ割り大会で準備したスイカがテントの中で割られてしまう

 「魚か肉か食い物」〜大食いを楽しみにしていた若い女性が突然姿を消す

 「夜の猫丸」〜一人会社で残業をしていたら次々と鳴る電話

 

 今回の謎も不可思議なものが多い。それを猫丸先輩が見事に解決?というか、納得いく理由を示す。必ずしも猫丸の推論が正しいかどうかは小説の中では確認されないのも良い。不可思議な現象・事実に対し、どう考えるのかが楽しい。

 猫丸が示す推理の中でなるほど、と思わせたのは、「子ねこを救え」の中で、野良猫が複数いる中、一匹だけ鈴をつけなかった理由。同じ理由で昔からクイズなどで示されるものがあるが、ある条件下のネコでも同じというのがなかなか気づかない点。

 こちらが全く予想もできなかったのは、「魚か肉か食い物」で、大食いを楽しみにしている女性が、店で出てきた食べ物を前に突然店から消えてしまった理由。猫丸はそれでもすぐに戻ってくると予言する。ちょっと強引な気もしたが、伏線もしっかりと張ってあったことに驚く。

 

 猫丸シリーズはここまで約10年間で5作。しかし、カズレーザーが話していた通り、次の作品は15年後となってしまい、それが現時点でのシリーズ最新作となる。とりあえず最新作を読むとして、その後はどうするか。