配達あかずきん 大崎梢

●配達あかずきん 大崎梢

 本屋さんが舞台、本屋さんが探偵役の推理小説短編集。

以下の5編からなる。

「パンダは囁く」〜老人からの伝言で本を探す客
「標野にて 君が袖振る」〜母が書店で本を購入後姿を消してしまう
「配達あかずきん」〜書店から配達された本に盗撮写真が挟まれていた
「六冊目のメッセージ」〜入院中の娘にオススメの本を購入した母親
「ディスプレイ・リプレイ」〜書店のディスプレイに落書きされる事件が発生

 

 大きな分類とすれば、「日常の謎」系なのだろうが、書店を題材にして書店員が探偵役の小説は今までなかったのではないだろうか。どのエピソードもいかにも現在の書店でありそうなきっかけで謎が始まるところが見事としか言いようがない。

 さらにどのエピソードも謎解き後の爽快感がハンパない。ある種、「おけら長屋」シリーズに匹敵する出来だと思う。

 巻末に実際の書店員さんたちによる座談会が掲載されているが、彼女たちもやはり同様の感想を抱いている。小説内で描かれる書店での仕事や作業が非常にリアルらしい。普段は客としてしか本屋さんと接触しないが、こんな事やあんな事が書店内では行われているんだなぁと感心した。

 続編もあるようなので楽しみに読ませてもらおう。