晩夏に捧ぐ 大崎梢

●晩夏に捧ぐ 大崎梢

 「成風堂書店事件メモ」シリーズの第2作、前作が短編集だったが、今回は長編。

 成風堂書店の杏子へ元同僚の美保から手紙が届き、美保の現在の勤め先である宇都木堂書店で起きた幽霊騒ぎの謎を解いてほしいと依頼される。バイトの多絵を連れ宇都木堂書店へ向かう2人。そこで聞かされたのは、27年前に起きた作家殺しの事件だった…

 

 前作があまりに面白かったので急いで第2作を読む。何も情報のないままに読み始めこれが長編であることに気づき驚いた。「書店の謎」は短編という形式にとてもあっていたので、それを長編でどう調理するのかと思ったのだ。

 短編集では、謎が提示され、それを探偵役の多絵がズバズバと斬っていくイメージだったが、さすがに長編となると、謎の解明まで時間がかかる。一見幽霊騒ぎとは無関係のように思える27年前の殺人事件の話が展開していくためだった。

 長編となり展開がダラダラとしたかと言えばそんなことはなく、むしろ一種の錯覚に陥った感触があった。それは、まるで「石坂金田一」シリーズの映画を観ているような感覚に近い。現在起きている事件(幽霊騒動)とは無関係に見える27年前の事件の謎に執着するあたりは、石坂金田一がまさに得意とする展開だから。昔の事件の関係者に話を聞いて廻るなんて、まさにそれそのもの。

 事件は予想通りの展開を見せ(=27年前の事件には隠された真相があり、それが現在の幽霊騒動にリンクしている)、探偵役の多絵の活躍で無事事件は解決する。wikiによれば、作者の大崎梢さんは横溝正史が好きなようで、やっぱり、といった感じ。

 ただ、素人探偵の多絵(と杏子)に関係者だけならまだしも、事件捜査に当たった刑事までが協力するという展開はさすがに無理があるか。あぁだから冒頭での成風堂書店での刑事とのやりとりが活きてくるのか。なるほどなぁ。よく考えてみれば、金田一も等々力警部の捜査に協力しているけど、警察が民間の探偵の協力を許すなんてありえないものなぁ(笑

 

 事件は杏子と多絵の休みの4日間で謎解きが行われるため、バタバタ感は拭えない。上記したような無理筋と思える設定もあるが、それでも「現代版金田一、ただしおどろおどろしい怖さを引いた」話として、やっぱり面白かった。続編を読むのが楽しみだ。