ようこそ授賞式の夕べに 大崎梢

●ようこそ授賞式の夕べに 大崎梢

 「成風堂書店事件メモ」シリーズの第4作、前作が短編だったが、今回は長編に戻った。これで短編集2作、長編2作に。

 

 前の長編「晩夏に捧ぐ」は、成風堂を飛び出し、地方の書店へまで出向く4日間の話だったが、今回は書店大賞開催日の1日の話。事件の発端から解決までが1日! 前回の4日間ではバタバタとした感じが否めなかったが、今回は章が時刻仕立てになっており、だんだんと書店大賞授賞式開幕の時間が迫ってきている感じがして、スリリングだった。ただ前回長編に比べると、横溝正史っぽさはほとんどなくなってしまったが(笑

 もう一つ展開がスムーズに感じられたのは、終盤までふたつの話が同時進行していったからだと思われる。いつもの杏子と多絵のコンビからの視点と、出版社営業部員たちからの視点のふたつからだったため、ダラダラもせず、しかも読者だけが全ての情報を得られるという側面もあった。

 出版社営業部員達による、覆面作家の正体推理などのエピソードも面白く、なおかつそれが最後の伏線回収にも繋がっていたのはさすが。

 

 この作品が成風堂シリーズの最新作のため、続きは読めないが、今回登場した出版社営業部員の一人井辻智紀を主人公にした別シリーズがあるみたい。

 って、その別シリーズが先に書かれていたのか!で2つのシリーズの主人公達がこの作品で出会うのね。だから「邂逅編」なのか。しまった。読む順番を間違えた!