リバティ・バランスを射った男

●433 リバティ・バランスを射った男 1962

 西部の田舎街シンボーンに列車でランス上院議員とその妻ハリーがやって来る。出迎えたのは元保安官のリンク。ランスは早速新聞記者に捕まったため、ハリーはリンクの案内でとある一軒家へ。そこは火事で焼けていたが、家の前にはカクタスローズの花がキレイに咲いていた。

 ランスは記者達の求めに応じ、なぜこの街へやって来たのかを話していた。それはトム・ドニフォンの葬儀に出席するためだった。ランスはそれだけ言い残し、妻とともに葬儀屋へ。そこにはポンペイという黒人が遺体のそばで待っていた。そこに新聞記者達がやってきて、トムの葬儀に出席する理由を問いただす。ランスは鉄道が引かれる前の話だと言って、昔話を始める。

 ランスは若い頃、法律家になることを目指し東部から西部のこの街へ馬車でやってきた。しかし途中リバティ・バランスという荒くれ者達に襲われ金品を盗まれ、法律家になるということも罵倒され殴り倒される。

 負傷したランスをトムが助け街へ連れて来る。トムはハリーにランスの看病を依頼する。ランスは法を持ってリバティを罰すると宣言するが、トムにバカにされる。西部では法よりも銃が強いと。実際街の保安官リンクもリバティ逮捕には及び腰だった。

 ランスはハリーの家、食事処の手伝いをするようになる。読み書きができないというハリーにそれを教えることを約束する。ある日、街にリバティがやって来る。リバティは給仕をするランスを見て笑い、足を引っ掛け食事をぶちまけさせてしまう。怒ったランスをトムが止め、リバティに拾うように命じる。しかし落ちたものを拾ったのはランスだった。トムはリバティを脅し、リバティは店から出て行く。

 ランスは学校を始め、街の子供達や読み書きができない大人達を教え始める。地元紙を読み上げ、憲法や選挙の大切さを教える。そこへトムがやってきて、地元紙が牧場主達に読まれたら、血が流れる、牧場主達は今の準州のままで良いと考えており、地元紙が書くように州への昇格は望んでいないため、リバティが銃で脅して来るに違いないと話す。ランスは学校を解散させる。ハリーはそんなランスに失望する。

 ランスは銃を練習しリバティに立ち向かうつもりだったが、トムはランスの銃が下手なのを見て笑い飛ばす。そしてシンボーンの代表者を決める集会が開かれる。トムの言っていたようにリバティがその場に現れ立候補をする。しかし住民が選んだのは、地元紙の発行人ピーボディとランスだった。怒ったリバティはランスを殺すと話しその場から去っていく。

 その夜、街にリバティが現れる。ピーボディの新聞社を訪れ、彼を殴り倒し、社内をめちゃめちゃにする。ランスはピーボディの元へ。彼は最後の言葉を残し死んでしまう。ランスは銃を取り、まだ街に残るリバティに戦いを挑む。右腕を撃ち抜かれたランスだったが、左手で銃を操り、リバティを射殺する。負傷したランスをハリーが治療しながら失礼な態度をとったことを謝罪し、愛を告白する。そこへトムがやって来る。二人の仲を見たトムはランスに声をかけ去っていく。そして酒場へ行き、リバティの子分達を蹴散らした後、酒場で騒ぎ、ポンペイとともに家へ帰る。家ではハリーを迎えるために増築していた部屋に火をつけ火事を出してしまう。ポンペイが彼を助け出す。

 キャピトルシティー準州会議が行われる。ランスもピーボディとともに出席、ランスは準州代表に推薦される。牧場主達との代表争いになるが、相手がランスのことをリバティ殺しで手を血に染めた男だと言われ、ランスは代表を辞退しようとする。

 そこへトムがやって来る。そしてリバティを射ったのは自分だったとあの夜の詳細を話す。それを聞いたランスは代表になることを決意する。

 以上がランスが語った昔話。彼はその後ワシントンへ行き、準州から州へ昇格、自身は知事となりその後上院議員となったのだった。話を聞いた記者は記事にはしないと話す。伝説は今は事実ですからと。

 トムの棺にはハリーが飾ったカクタスローズの花があった。ランスとハリーは列車で帰る途中、任期を終えたらシンボーンへ帰ってこようと話す。

 

 このブログを始めて西部劇は70本近く観てきたが、一番驚かされた一本かもしれない、もちろん良い意味で。ジョンウェインが主役っぽくなく、完全にジェームズステュアートが主役として話が進んでいくのに違和感があった。さらに敵役リバティとの対決シーン、利き腕を撃ち抜かれたにもかかわらず、左手でなんとリバティを倒してしまう。そんな御都合主義の結末かよ、と思っていたら、今度はジョンウェインがカッコ悪いこと(笑 好きな女を取られ、ヤケ酒を飲み、酒場で暴れ、家に火をつける。

 でラスト、準州会議に流れ込む。あぁ法と銃の戦いがメインテーマだったからなぁと思っていたら、まさかのジョンウェインが登場してのどんでん返し。しかも後のミステリー映画さながらの、「あの時のシーンを別角度から再現する」というおまけ付き。

 いやぁ驚いた、本当に。この1点だけで十分傑作。と思ったらジョンウェインとジョンフォードコンビ最後の西部劇なのね。やるなぁ。