虹の家のアリス 加納朋子

●虹の家のアリス 加納朋子

 前作に続く、「アリス」シリーズの2作目。6編からなる短編集。前作最終章で行方不明となった探偵仁木の助手安梨沙がどうなるか、と思ったが、しっかりと探偵事務所に戻ってきて話は続くことに。

 

「虹の家のアリス」〜ママ友サークルの一人から、サークルへの嫌がらせの調査依頼

「牢の家のアリス」〜産婦人科で生まれたばかりの赤ん坊が行方不明に

「猫の家のアリス」〜ネットの掲示板で連続猫殺しの事件が発生

「幻の家のアリス」〜安梨沙の家の家政婦から、安梨沙の態度についての調査依頼が

「鏡の家のアリス」〜仁木の息子の元恋人がストーカーになってしまう

「夢の家のアリス」〜花泥棒を捜査することになるが、被害は複数の家に及んでいた

 

 前作が面白かったので続編を読んだのだが、まず驚いたのは、事件に関係する登場人物がほとんど前作で登場してきた人物の関係者であったこと。前回も書いたが、探偵としての設定が、乾くるみさんの「カラット探偵」シリーズを思い起こすため、あちらと同様、また様々な展開が待ち受けているかと思いきや、依頼人の輪が意外に狭いので驚いた。しかし探偵仁木の設定が、いわゆる脱サラをして50過ぎでいきなり探偵を始めた、というもののため、そんなに依頼人が増えるわけもなく、関係者のツテを頼って依頼を受けていく、という展開のため、ある意味自然か。

 本作も事件そのものはあまり大きなものはなく、いかにも知り合いの探偵がいれば頼んでみようかと思うような内容が多い。そんな中でも「鏡の家の〜」は、息子が依頼人でありながら、推理小説好きを見事にダマすオチが待っていて楽しめた。

 

 しかしこのシリーズは、事件そのものの魅力より、事件を通して描かれる人間関係が見どころとなっている。前作がどちらというと「夫婦」の関係性を描いたものが多かったのに対し、本作は「家族」の関係性を描いたと言えるかもしれない。特に仁木の子供〜息子と娘〜のことまで描かれ、親として仁木が心配している部分が見える。もちろん、安梨沙の家族のことも登場してくる。

 さらに(現時点で)たった2冊のシリーズであるが、前作に比べて主人公仁木も安梨沙も成長している姿も描かれ、これでシリーズを打ち止めにしようと作者が考えているのもうかがえる。

 なかなか面白いシリーズだったのに、続きが読めないのは残念。