ホームズの事件簿 北原尚彦

●ホームズの事件簿 北原尚彦

 最近BSプレミアムで毎週「シャーロックホームズの冒険」を観ていて、ホームズはやっぱり面白いと感じていたところ、この本を見つけたので早速読んでみた。

 以前「シャーロック・ホームズの蒐集」を読んでいるので、北原さんのホームズ物は安心して読めると思ったが、なんと本作ではホームズはほとんど登場せず、ホームズ物の脇役の皆さんが主人公のお話の短編集。以下の6編からなる。

 

ケンジントン診療所の怪 ジョン・H・ワトスン博士」

〜「最後の事件」後、ワトスン博士の家に何者かが侵入した形跡が見つかるが…

 

「読書好きな泥棒 ハドスン夫人

ハドスン夫人が下宿女将仲間の女性から下宿人の調査を頼まれるが…

 

「グレヴィレア屋敷の秘密 レストレード警部」

〜レストレード警部がグレグスン警部と捜査での競争を始める

 

「バスカヴィル秘話 サー・ヘンリー・バスカヴィル」

〜あの「バスカヴィル」家での事件の裏で起きていた殺人事件

 

「不正規隊長の回想 ウィギンズ少年」

〜BIS隊長のウィギンス少年が新入りの少年にホームズとの出会いを語る

 

「女豹と毒蛇 アイリーン・アドラー」

〜「ボヘミアの醜聞」の前日譚。「犯人は二人」のミルヴァートンも登場

 

 ホームズ物のパスティーシュは数多くあるが、その脇役が主役のものはあまりないのではないか。それだけでも本作は面白いのに、随所に聖典とリンクしている部分があり、ニヤッとさせられる。主役ではないが、マイクロフトまで登場して読者を喜ばせてくれるし、意外な形でホームズ自身も登場している。これは見事。

 続編もあるようで、是非読んでみたい。