透明人間

●442 透明人間 1992

 男たちが温度センサグラスを身につけ街で誰かを探していた。その頃透明人間であるニックはカメラの前に立ち、ビデオに真実を語ろうとしていた。

 3月のある火曜日、ニックはアカデミークラブで一人時を過ごしていた。しかし知り合いのジョージと出会い酒の席に誘われる。そこにいたのはアリスという女性だった。二人は惹かれあい、金曜日に一緒に食事をする約束をして別れる。ニックはバーに戻り酒を飲み、翌日二日酔いでマグナ社の会議に出席する。講演がつまらなかったニックはマグナ社の中で休める場所を探ししばらく昼寝をする。しかしコンピュータの誤作動でマグナ社内で爆発が起こり、社屋の一部が透明化するとともに、ニックも透明人間になってしまう。

 自分が透明人間となったニックはパニックを起こす。そこへCIAのジェンキンスが事態収拾のためにやって来て、ニックに一緒に来るように話す。しかしニックは人体実験されることを拒否する。やがてマグナ社の社屋がまたも爆発を起こし現場はパニックに。ニックはその場から逃げ出す。

 ニックは家に戻る。ジェンキンスは上司にニックの件について上への報告を取りやめ、自分たちで捕まえることに。透明人間であることの持つ優位性を自分たちの力にしようと考えていた。

 翌日ニックは秘書に病気だと偽りしばらく会社を休むことに。しかし留守番電話にジェンキンスからの連絡が入っており、自分の正体がバレていることに気づいたニックは自宅から逃げ出し、街をさまよい、アカデミークラブに身を隠すことに。そしてマグナ社のワックス博士に事情を説明することに。博士に会いに行き事情を説明するが、彼はニックの体を元に戻す方法は知らず彼の体を調べたいと話す。その場にもジェンキンスが現れたためニックは逃亡しクラブに戻る。

 ニックは敵のことを知るためにジェンキンスの事務所へ。彼からCIAの仕事を手伝うように誘われるがニックは断る。そしてジョージの別荘へ逃げる。そこで電話で食べ物や飲み物をジョージのツケで頼み過ごすことに。しかしジョージたちがアリスを連れ別荘にやって来る。

 ニックは別の別荘へ入り、そこへアリスを呼び出し事情を全て告げる。ニックはアリスに協力してもらい株を買いその儲けで暮らすことを考える。ジョージたちは別荘から帰ることになるが、アリスは一人別荘に残ることに。仕事に戻ったジョージは友人に自分の別荘でツケで買い物をした人間がいたことを電話で告げ、それがニックだと話す。それを盗聴したCIAは別荘へ。

 ニックとアリスはCIAから逃げ、列車でメキシコへ逃亡することに。しかしジェンキンスは駅員にアリスの写真を見せ列車に乗ったことを確認、追跡、列車へ乗り込んで来てアリスを確保する。ニックは列車から逃亡、川へ落ちる。

 ここで冒頭のビデオ撮影の場へ戻る。ニックは自分と引き換えにアリスの解放をジェンキンスに要望する。そしてジェンキンスの事務所のそばで自分とアリスの交換をする。しかし包帯などで身を隠した男はニックではなく、ジョージだった。ニックとアリスはタクシーで逃げるが、CIAはすぐに追跡することに。

 そしてジェンキンスの追跡劇が始まる。工事現場で砂まみれになったニックをジェンキンスは執拗に追い、ビルの屋上へ。ニックは自殺すると見せかけ、一部だけが砂まみれになったジャケットをビルから落とし、ジェンキンスもそれを追って屋上から飛び降りる。CIAはジェンキンスの死を病気のせいに。落ちて来たジャケットを見て悲しむアリスの元にニックが現れ二人は現場から去っていく。二人は雪山で過ごし、アリスはニックの子供を妊娠していた。

 

 昔友人に勧められた一本。やっと観ることができた。

 「透明人間」という映画でも小説でもドラマでも多く取り上げられて来た題材。しかしこの映画は、その透明人間を使ったコメディのような、SFのような作品に仕上がっている。透明人間の特性を生かし「何か」を成し遂げるのではなく、透明人間になってしまった人間の悲しみを前面に押し出し、それでいてハートフルな一本に仕上がっている。

 愛する人の前に現れることのできない悲しみや、友人たちが自分がいないことを良いことに好き勝手自分のことを話すのを聞く悲しみなど。それでもアリスに全てを告白し二人で先へ進む展開はなかなか良かった。

 30年前の特撮も良い。今の時代ならば何の違和感もないようなCGで製作されるのだろうが、この時代の特撮もやはり捨てがたい。中には特撮というより、俳優さんたちの演技で魅せる場面も多く、時代を感じさせる。

 SFの世界では有名な監督さんの作品らしい。他の作品も観てみたい。