菜の花食堂のささやかな事件簿 碧野圭

●菜の花食堂のささやかな事件簿 碧野圭

 食堂で開かれる料理教室を舞台にその生徒たちの身の周りで起こる日常の謎を、教室の下川辺靖子先生とその助手館林優希が解いていく短編集。以下の6編からなる。

 

「はちみつはささやく」〜教室の生徒香奈が欠席、教室を辞めるを言い出す
「茄子は覚えている」〜唯一の男性生徒杉本が妻の思い出の品を食べたいと言い出す
「ケーキに罪はない」〜優希の前の会社での苦い思い出の謎を先生が解き明かす
「小豆は知っている」〜高齢の生徒村田が教室を欠席、彼女の家に料理を届けに行くと
「ゴボウは主張する」〜いつも3人でくる生徒の一人八木と二人のママ友
「チョコレートの願い」〜靖子先生に娘から贈り物が届く。その真意は?

 

 碧野圭さんのことは全く知らず、偶然ネットで評判を見て読んでみたが、ここ最近読んでいた日常の謎系のシリーズの中でも、まさに人情話系として最高。「おけら長屋」シリーズと比べると、一作一作が短くコンパクトにまとまっている印象を受けるが、どの話も困っている登場人物を靖子先生が見事に解決していく。というか、「謎」というより、日常生活の中でいかにもありそうな話ばかり。その裏にある真実を見抜く靖子先生の眼力の凄さやその言葉に感動。

 特に2作目「茄子は覚えている」のラストで靖子先生が語る一言。

 助手の優希が男性生徒杉本とその妻との仲を羨んだ時に

 

「出会えるかどうかは運だけど、その関係をキープするためには努力がいるのよ」

 

 いやぁ、まさに至言。

 シリーズ化されている作品のようなので、早速続編を読んでみよう。