追われる男

●443 追われる男 1955

 マット・ダウは一人で山中の川で休憩しているところへ若者が後ろから近づく。マットは彼に不用意に後ろから近づくなと注意をする。若者はデイビー。マットがマディソンを目指していることを知りデイビーはついて行く。彼はそこの住人だった。

 途中列車が通り過ぎる際に、二人は鳥を撃つ。列車は給料運搬をしており前に強盗にあっていた。二人が銃を撃ったのが前の強盗の時と同じだったため、列車に乗っていた男たちは金の入った袋を二人の前に投げ出す。マットは強盗を勘違いされたことに気づき、金を持ってマディソンの街へ急ぐ。

 列車はマディソン駅へ。そこで乗組員たちは強盗にあったことを報告、知らせを聞いた保安官は追跡隊を組み現場へ向かう。マットたちが金の袋を持っていることを発見しマットたちを射撃。デイビーは足に怪我を負い、マットも軽傷を負う。しかし追跡隊は一人がデイビーであることに気づき、そばのスウェンソンの農場へ連れて行き治療をする。街に戻ったマットは列車の乗組員に抗議、強盗だという誤解が解ける。

 マットはスェンソンの家へ。そこで娘のヘルガと出会いデイビーを見舞う。医者は回復には奇跡が必要だと話す。マットはヘルガとともにデイビーの看病をする。夜、マットとヘルガはお互いの身の上話をし互いに惹かれ合う。ヘルガから人手が足りないと聞いたマットは農場の仕事を手伝うことに。

 デイビーは奇跡的に回復したが、足は元に戻らないと医者は診断する。デイビー本人もそれに気づくが、マットはデイビーに厳しく接しデイビーは不自由ながら歩けるようになる。

 街の住人たちがやって来て一連の事件を謝罪し、償いのためマットに保安官になるように勧め、マットは承諾、さらにデイビーを保安官助手とすることに。二人は街で保安官の仕事を始める。街の銀行に2人組の強盗が押し入る。1人は撃たれ捕まるが、もう1人は逃亡、マットが追いかける。マットは山中で強盗を捕まえ街へ戻るが、先に捕まった犯人が吊るし首にされていた。デイビーに事情を聞くと街の住人たちが暴走し裁判もせずに刑を執行したのだった。デイビーは何もできずにいた。

 マットは残った1人を護送し連邦保安官に元へ連れて行くことに。デイビーが名誉挽回のためその役を買って出たため、マットはデイビーにそれを任せる。マットは酒場に行き勝手に刑を執行した住人たちを捕まえ裁判にかける。しかし裁判は罰金刑で済んでしまう。

 デイビーが山中で倒れていたところを発見され街へ連れてこられる。彼は強盗犯に逃げられてしまっていた。心配したヘルガがマットを訪ねる。そこで二人は結婚の約束をし、マットはヘルガの父に承諾をもらいに行く。

 復活祭の日、教会に街の皆が集まっている際に強盗犯が教会へやってくる。強盗犯の一人ジェントリーはマットの昔の仲間だった。強盗犯は銀行を爆破に金を奪って逃げる。その際、復活祭に遅れていたヘルガの父が強盗犯に撃たれ死んでしまう。住人たちはマットが強盗犯と知り合いだったことを非難するが、マットは無実の罪で刑務所に入れられていた時に一緒だった、刑は取り消されたと話す。そして追跡団を組み犯人たちを追跡する。

 コマンチ族の住居地に差し掛かり皆はこれ以上進むことを躊躇する。マットはデイビーと二人だけで追跡を続ける。ひどい嵐に見舞われる中、デイビーがマットを撃ち、マットは左腕を負傷するが、デイビーを取り押さえる。デイビーは前の強盗犯護送の時に犯人たちと取引をして強盗の仲間になっていた。マットはデイビーを連れ追跡を続けるが、強盗犯たちはコマンチ族に殺されており、金は無事だった。金を持って街へ戻るが、途中休憩している時にコマンチ族と出くわす。二人は金を隠しコマンチ族から逃げるが、川を渡る際に怪我をしているマットは流されてしまう。

 なんとか岸にたどり着いたマットは廃墟を見つけ中に入る。そこは強盗犯たちのアジトで、強盗の1人とデイビーがいた。マットは強盗犯を撃ちデイビーと話をする。撃たれた強盗犯はまだ生きており密かにマットを狙う。それに気づいたデイビーが銃を抜き強盗犯を撃つが、マットはデイビーを撃ち殺してしまう。

 金を持って街へ戻ったマットをヘルガや住人たちが出迎える。

 

 これまたちょっと変わった西部劇。

 冒頭、いきなり主人公が列車強盗に間違えられてしまうがここはあっさりと誤解が解ける。しかし主人公と一緒にいた若者が怪我を負い足が不自由になってしまう。父親のような目で若者を見守る主人公、親に反発するように主人公にも反発する若者。何度となく失敗を繰り返す若者だが、主人公は常に温かい目で若者を見つめる。それは自分にも死んでしまった息子がいたためだった。

 ジョンウェインの西部劇にありそうな、男2人と女1人の組み合わせだが、恋はあっさりと成就する。しかし男2人、主人公の思いが届かず若者は楽な道を選んでしまい、悲劇的な最後を迎える。

 映画の大きなテーマは冤罪。冒頭の列車強盗もそうだし、主人公の過去もそう。劇中最初の強盗犯を住人たちが裁判にかけずに絞首刑にしてしまうのは冤罪ではないだろうが、正当な裁判が行われないことの怖さを描いている。映画が公開されたのは1955年、赤狩りの影響があったのかしら。