誰が為に鐘は鳴る

●444 誰が為に鐘は鳴る 1943

 冒頭、「誰が為に鐘は鳴るのか」という詩が流れる。

 1937年内戦状態のスペイン。2人の男が列車爆破をさせ逃亡するが、追っ手に追われカシュキンは撃たれる。相棒のロバートは彼の希望通りカシュキンを撃ち殺し逃げる。

 アジトに戻ったロバートはゴルツ将軍から次の指令を受ける。反乱軍として政府軍に攻勢を仕掛けるため、政府軍の援軍ルートとなる橋を爆破するように命じられる。アンセルモという土地に詳しい老人とともに現地へ行き、4日後の夜明け味方の攻撃を待って作戦決行をすることに。

 ロバートはアンセルモと現地のゲリラ軍に会う。ボスのパブロ、その妻ピラー、市長の娘で彼らに匿われた若い娘マリア、その他にも大勢の仲間がいた。ロバートとマリアはお互いに惹かれ始める。ロバートの作戦を聞いたパブロは爆破に反対するが、ピラーの言葉で皆爆破に賛同する。パブロが反対した理由の一つは、爆破後に皆で逃げるための馬がいないことだった。

 ロバートはピラー、マリアとともに仲間のゲリラであるエルソルドに馬の調達を頼みに行く。帰り道、ピラーが気を利かせロバートとマリアは二人きりで話しをする。マリアは自分が受けた恥辱を話そうとするがロバートはそれを遮る。二人はキスをする。

 夜、この季節には珍しく雪が降り始める。エルソルドたちが馬を盗むのに際し雪が降ると足跡が残るため馬の調達が難しくなるとパブロは話しアジトから逃げて行く。しかししばらくしてパブロは戻り、仲間になることを誓う。皆は彼を許さそうとしなかったが、パブロは逃亡時のルートを知っているため彼を許すことに。

 翌日、エルソルドたちが馬を盗んだ際の足跡が発見され、軍の追っ手が現れる。ロバートたちは警戒していたが、追っ手の目的がエルソルドたちだとわかり、手を出さずに黙視していた。エルソルドたちは軍と銃撃戦となり、大尉を撃ち殺すが、飛行機による爆破で全員死亡する。

 皆が出払っているアジトに、馬の足跡をごまかす為に出ていたパブロが戻ってくる。彼は飛行機爆破に恐れをなし、橋の爆破のための起爆装置を燃やしてしまう。皆が戻り、ロバートは軍が反乱軍の攻撃を察知していることを知り、ゴルツ将軍へ攻撃中止の連絡を取ろうとし伝達を仲間に頼む一方で、橋爆破の準備もする。

 翌朝に爆破となった最後の夜、ロバートとマリアは二人の時間を過ごす。そして翌朝未明、橋爆破に向かう。ゴルツ将軍への伝達はなされたが、時すでに遅く、反乱軍の攻撃は開始されていた。飛行機による攻撃を確認したロバートたちは橋の両端にある待機小屋を攻撃し、橋にダイナマイトを仕掛ける。何人かの仲間がやられる中、ロバートは敵部隊が通行する直前に橋の爆破に成功する。

 仲間たちとともに馬のいる場所に逃げ、皆で逃亡を図るが最後に対岸に敵軍がいる場所を馬で駆け抜ける際に、ロバートだけが被弾し足に怪我を負ってしまう。乗馬し逃げることができないと判断した彼はマリアに別れを告げ、一人現地に残り皆が逃げ去った後、軍に対し機関銃で対抗を始める。

 

 言わずと知れた名作。バーグマンファンの自分からすれば、「カサブランカ」の翌年に公開されバーグマン初のカラー作品という貴重な一本。

 まるで舞台劇のように場面転換の少ない映画であり、ほぼアジト周辺でのシーンばかり。ちょっと暗めのシーンが多い中でも、ショートカット?のバーグマンの美しさは変わらない。特にゲリラ仲間たちが小汚い格好(笑 をしている中でのバーグマンの美しさは尋常ではない。「マリアカット」が流行したのも頷ける。また原作者ヘミングウェイがマリアはバーグマンしかいない(by wiki)と言った理由も十分納得。

 2時間半を超える映画で久しぶりにインターミッションまである一本だったが、ゲリラ内の人間関係やエピソードがてんこ盛りで飽きなかった。人間の異常性を発揮したパブロ、女性の力強さと弱さ両方を見せたピラー、政府軍に対する心意気を見せたエルソルド、誰もとても印象に残る脇役たちだった。もう一人の主役カッコ良いゲーリー・クーパー。有名なバーグマンとのキスシーンもある。

 ラスト、無事に逃げ切ったと思われた後に悲しい結末が待っている。ここで冒頭の詩が大きな意味を持っていたことに気づかされる。

 

 誰も人の死より逃れられぬ

 ゆえに問うなかれ

 「誰がために鐘は鳴る」と

 そは汝がために鳴るなり

 

 いやぁ久しぶりに名作らしい名作を観た。