菜の花食堂のささやかな事件簿 きゅうりには絶好の日 碧野圭

●菜の花食堂のささやかな事件簿 きゅうりには絶好の日 碧野圭

 前作に引き続き、料理教室を舞台にその生徒たちの身の周りで起こる日常の謎を、教室の下川辺靖子先生とその助手館林優希が解いていく短編集。以下の5編からなる。

 

「きゅうりには絶好の日」〜駅の自転車置き場でいつも見かける自転車の謎
「ズッキーニは思い出す」〜初めて教室に来た生徒の叔母が教室に現れ…
「カレーは訴える」〜マルシェでカレーだけが売れることが続いて…
「偽りのウド」〜靖子先生が考えたウドを使ったレシピがネットで公開され…
「ピクルスの絆」〜靖子先生の弟子になりたいと生徒が希望し採用するが…

 

 前作に引き続き、生徒が持ち込む謎を靖子先生が見事に解決して行く。

 「きゅうり〜」で謎として描かれる、「いつ見ても駅の駐輪場においてある自転車」というのは誰しもが体験したことがありそうな話。前に仕事仲間がこれと同じことをしていたことがあり、この謎はよく理解できたが、別の人から見たら不思議な自転車なんだろうなぁと改めて感じた。

 「カレー〜」と「偽りの〜」はちょっとイヤな話。どちらも靖子先生の料理やレシピが他人に無断で使われてしまう話。特に「偽りの〜」の方はネット社会の怖さを感じさせるもの。ただ、「カレー〜」の中で、問題となったお客さん以外にも、カレーだけを買って行った人もいる中、該当のお客さんだけを謎としたのは、ちょっといただけなかったか。

 「ズッキーニは〜」は、ある意味定番の親子モノ。幼い頃に別れた親が病気になり…とよく使われる設定だが、やはりこのシリーズは前作でも書いたように人情話系なのでこの手の話には強い。やっぱり泣かされてしまった。

 最後の「ピクルス〜」はこれまた前作と同様、最終話で靖子先生のプライベートの一部が露わになる話。前作のラスト、靖子先生はフランスへ旅立ったはずだが、それについては本作ではほぼ触れられずじまい。ただ本作の「ピクルス〜」は、新しい?弟子香奈さんやもう一人の主人公優希の今後にも関係する話なので、次回作でその辺りが関係してくるだろう。

 最終話に次に繋がる話を持ってくるところも憎いが、やっぱり続きが読みたくなってしまう。