信長島の惨劇 田中啓文

●信長島の惨劇 田中啓文

 本能寺の変から数日後、死んだはずの信長からの手紙で秀吉、勝家、右近、家康がとある島に集められる。そこでわらべ歌の歌詞通りに殺人事件が発生するが…。

 

 北原尚彦さんのホームズ物を読んだら、以前同じ頃に読んだ田中啓文さんの「シャーロックホームズたちの冒険」「〜新冒険」を思い出し、田中さんのパロディ物を探していたところ、この本にたどり着いた。

 信長に関してここ1、2年いろいろと読んで来たので興味があったし、そこへクリスティの「そして誰もいなくなった」へのオマージュ、と書かれたら読まずにはいられない。

 

 冒頭、通説としてよく語られる信長の光秀に対する暴挙から本能寺の変までが描かれる。あぁこの辺りの説を取るのか、と思っていると、いきなり孤島へ4人の武将が呼び寄せられ、歴史小説がいきなり推理小説へ。

 そもそも本能寺で死んだはずの信長が現れるのか?その辺りをどう始末つけるのかと思っていたら、いきなり殺人事件が発生。しかもわらべ歌の本歌取り。さらに殺人は続いていくことに。それでも信長は現れず、それならば誰が何のために?という謎が深まっていく。さらに遅れて来た招待客として、光秀までもが登場。もう何が何だか(笑

 

 こんなめちゃくちゃにしておいて、話の辻褄をどう合わせるのかと思っていたが、「そして誰もいなくなった」の手口を使いつつ、著者独自の新説「本能寺の変」の真相?が明かされ、信長も登場。事件の真相が語られる。

 田中啓文さんらしい新説(珍説?)やギャグ。「ホースを使え」にはさすがに笑わせてもらった。バカミスと分類させられてしまうのだろうが、それでいて、巻末に掲げられた6つの補遺を読むとニヤリとさせられてしまう。

 久しぶりに一気に読みきってしまった。やはり田中啓文面白い。