竹林の七探偵 田中啓文

●竹林の七探偵 田中啓文

 先週読んだ『信長島の惨劇』が思いのほか面白かったので、田中啓文さんの本をもう一冊読むことに。

 昔の中国、「疑」の国の竹林に集う7人の男たちが酒を飲みながら、謎の話「疑案」を話し合い、答えを見つけようとするが、最後には謎の女性華虞姫が謎を解いてしまうというパターンの短編集。以下の6編からなる。

 

尸解仙」〜友人が死亡したが、棺桶から死体が消える

「酒徳頌」〜高楼で飲んでいたところ、そのうちの一人が死体となって発見される

「竹夫人」〜抱き枕(竹夫人)を愛しすぎた男に起きた奇妙な事件

「竹に虎」〜白虎を退治したという爺さんの武勇伝の真相

老子はどこへ行った?」〜採用試験で犯したミスと老子の晩年について

「最後の清談」〜7人の一人が作った月琴が竹林に持ち込まれるが…

 

 舞台が古代中国であり、昔話テイストで話が進む中、しっかりと「日常の謎」系?の話が語られ、その謎解きに皆が挑もうとする。しかし常に真相に辿り着くのは、謎の女性華虞姫。

 田中啓文さんの本なので、もっと奇想天外な話が持ち込まれるかと思ったが、話はある意味正統派の推理小説で収まっている。「竹林の七賢」という実在の人物の話のパロディのようだが、そのオリジナルに対する知識が全くないのでパロディとしてもちんぷんかんぷんだった。

 もともとこの本を選んだ理由は、ネットに田中浩史版「黒後家蜘蛛の会」だとあったからだったが、そちらのパロディとしても中途半端。7人の会話がもっと面白ければ「黒後家蜘蛛」を感じたかもしれないが、そこはあまり膨らませていなかったのが惜しいか。ラストの華虞姫の正体についても、その名前から正体は明らかだったし。著者自身が「黒後家蜘蛛」のパロディだと断言しているようなので、もっと舞台を違うものにして、本格的な田中啓文版黒後家蜘蛛ができることを期待。