信長と秀吉と家康 池波正太郎

●信長と秀吉と家康 池波正太郎

 「あの」池波正太郎さんが信長秀吉家康について1冊の小説にしていると気づいて選んだ1冊。リレー形式で3人の歴史を小説化している。ただしボリュームとしては、信長120ページ、秀吉100ページ、家康50ページ、といったところ。豊臣が滅ぶまで、なので家康の分が短くなるのは仕方なしか。

 書かれたのが約40年前ということもあるだろうが、内容は歴史的事実とされているものをベースに小説としており、著者の考えや創作はほぼ入っていない。解説によりこの本が年少の読者に向けたものと知り、それも納得。池波さんによる歴史への招待本といった感じ。それでも時系列に話が進んで行くので、学校の教科書よりははるかに頭に入ってきやすい。ここのところ戦国時代ものを数多く読んできたので、その全体的な復習となった。

 著者の考えなどはほぼ書かれていないが、全くないわけでもない。信長の早すぎる死を悼み、もし信長がもう少し生き延びれば日本はどうなっていたかと考え、秀吉については晩年の無謀と言える朝鮮攻めを描きながらも死の間際の人間としての弱さを描き、家康については秀吉の死後から関ヶ原までのおとぼけぶりを描く。

 解説でも触れられているが、これが鬼平犯科帳でも人の本当の姿を書いてきた池波さんらしさを感じる。戦国時代について読み始める時にこの1冊に出会っていたかったなぁ。