スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 友井羊

●スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 友井羊

 フリーペーパーを作る会社に勤める理恵がスープがメインのお店しずくに通うようになる。その店の店主である麻野が探偵役となる短編集。以下の5編からなる。

 

「噓つきなボン・ファム 」

 会社での残業終わりに理恵のポーチが紛失するが、翌朝元あった場所に。なぜか同僚の伊予は理恵を敵対視する。理恵は事情を麻野に話すが…

 

「ヴィーナスは知っている」

 伊予は学生時代の先輩椎名をしずくに連れて行く。彼は彼女から振られたばかりで落ち込んでいた。伊予は椎名のために元カノのことを探り始める。

 

「ふくちゃんのダイエット奮闘記」

 専門学校の学生福田三葉がしずくを訪れる。彼女はダイエット中だった。しかし周りの人間たちは彼女を太らせようとしていることに彼女は気づく。妹香奈子の仕業だとわかった三葉は…

 

「日が暮れるまで待って」

 しずくを訪れた3人の女性客。うち一人は婚約していたが、婚約指輪をしずくで紛失してしまう。

 

「わたしを見過ごさないで」

 理恵は街で麻野の娘露が見知らぬ女性と一緒なのを目撃する。麻野の妻は死んだと聞かされていた理恵は露がその女性をおかーさんと呼んでいることで混乱し、お店に向かう。

 

 これもAmazonのオススメにあった一冊。日常の謎系の一冊であるが、謎そのものはそんなに大げさなものではなく(最終章を除く)、日常本当にありがちなことだと言える。推理小説というよりは、お店を舞台にした人間ドラマといったところか。しかし探偵役の麻野やその娘露の不思議な言動に思わず話に引き込まれる。事件?の解決も犯人を捕まえる、のではなく、あくまで事実を明らかにする、ということが主眼で、心温まる話ばかり。特に最終章の話は、過去と現在をパラに並べ、麻野自身やその妻の秘密を明らかにする一方で、なぜしずくというスープ屋を麻野が始めたかもわかるストーリーになっている。

 2話目からいきなり主人公目線が変わり(理恵→伊予)ちょっと戸惑ったが、3話以降もその路線で進んだので慣れてしまった。

 先日読んだ「萩を揺らす雨」もそうだったが、最近の日常の謎系はどうやらこの手の、推理小説よりもドラマの方に主眼をおいているもの、が多いようだ。もちろんキライではない(笑 続編にも期待したい。