ひとり酒の時間 東海林さだお

●ひとり酒の時間 東海林さだお

 「ひとりメシ超入門」に続いて東海林さんのエッセイ。こちらも過去のエッセイのアンソロジー集のようで、「ひとり酒」をテーマにチョイスされたエッセイが集められている。「ひとりメシ超入門」とかぶるエッセイもあったりするのはご愛嬌。

 「ひとり酒」にこだわるため、後半では複数の人間と一緒に酒を飲みに行った時に困ることが挙げられていて、これまた面白い。一見傍若無人なことばかり書いているような東海林さんだが、複数の人間と一緒に酒を飲みに行くと、どれだけ気を遣うかが書かれていてそれがオーバーである分可笑しくてたまらない。

 しかし真骨頂は酒に関することでのこだわり。『「お通しはサービス」とは限らない』で描かれる「お通し」の問題。その値段からお通しの売買契約まで行き着き、お通しの曖昧さを指摘する。果てはオリンピック開催まで見通し、「お通し規制法」から「お通し鑑定士」まで提案する。もう東海林さんの独壇場である(笑

 もう一つ上げておきたい。「第4のビール出現」で提示される問題。このエッセイがいつ書かれたものであるかわからないが、ノンアルコールビールに対する素朴で的を得た疑問が提示されている。携帯電話を引き合いに出してルールの変化を指摘、先にルール作りをしておいた方が良いのでは、という提案には頷かざるを得ない。笑いだけでなく、こんな指摘もあるのが本当に東海林さんらしい。