スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー 友井羊

●スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー 友井羊

 前作に続きシリーズ第3作。フリーペーパーを作る会社に勤める理恵がスープがメインのお店しずくに通うようになる。その店の店主である麻野が探偵役となる短編集。以下の5編からなる。

 

 

「似ているシチュー」

 理恵の上司である布美子の出産が間近となる。そんな時、布美子の夫井野の妹である環奈から理恵は相談を持ちかけられる。環奈の兄が布美子以外の女性と会っていたのを目撃したというのだった。さらに井野は趣味の品を売りお金を作っていたことも判明する…

 

「ホームパーティーの落とし穴」

 理恵は学生時代の先輩から合コンに誘われ参加する。料理は各自が作ることとなったが、理恵が下ごしらえしておいたジャガイモが変色してしまう。その理由は…

 

「ゆっくり、育てる」

 理恵は麻野とともに買い物に行くことに。そこで麻野の友人三坂と出会う。彼は恋人の潤子との結婚話が進んでいた。ある日理恵は潤子から結婚が延期になりそうだと相談を受ける。三坂の気持ちがわからない潤子だったが、理恵はある料理の失敗から真相を確かめようとする。

 

「窓から見えない庭」

 スープ屋しずくに常連客だった大坪六朗の娘若菜が現れる。六朗は亡くなっており、若菜は父が3年前妻を亡くしてあとから姿を消していたと話す。若菜は皆から六朗の最近の様子を聞き、彼が母や自分との生活とは全く違う生活をしていたことを知りショックを受ける。話を聞いた麻野はある推理を若菜に語り始める…

 

「やわらかな朝に」

 前作最終章で登場した梓や忠司が再登場。忠司は社会復帰に向け梓に料理を習うことに。梓は忠司が気に入っているスープの作り方を麻野から教わる。しかし忠司は梓に教えてもらったスープの味が再現できず落ち込んでしまう。スープの味が再現できなかった理由を麻野は推理する。

 

 シリーズ3作目。上記あらすじを書いていた気がついたが、ここにきて主人公を理恵に据えた話が多くなってきた。もちろん理由は理恵の麻野に対する想いが強くなってきたため。2話目では合コンに誘われ男と一緒のところを麻野に目撃されドキドキしたり、3話目では麻野と一緒に買い物に出かけることになり喜んだり、と理恵目線の話が進む。

 そして最終章で前作でも登場したコンビが関係する話の中で、理恵はある想いを強くし麻野にその想いを伝える。それを麻野が優しく受け止める場面が良い。

 1冊をかけて理恵の想いの進展を見せたのだから、次回作ではもう少し話は進むんでしょうねぇ。期待しましょう(笑