トム・ホーン

●468 トム・ホーン 1980

 アパッチとの戦いでジェロニモを捕まえた英雄トム・ホーンがワイオミングにやってくる。酒場でボクサーと揉めケンカとなった彼にジョン・コーブルが声をかけ、自分の牧場で働くように勧める。ジョンの牧場の牛を盗む牛泥棒に手を焼いていた彼は、トムを用心棒として雇うことに。

 保安官ジョーがトムのことを気にするが、ジョンは自分のやり方で牛泥棒を退治してくれと頼む。トムは牛泥棒たちが盗んだ牛を競りにかける会場に現れ彼らに宣戦布告をする。そして牛泥棒たちを次々と射殺していく。

 トムはパーティ会場で教師のグレンドリンと知り合う。彼は彼女のために馬を用意し二人は仲良くなっていく。

 牧場主たちの組合の皆がトムのやり方に不安を覚え始める。牛泥棒はいなくなり平和が訪れたが、トムの非常なやり方が自分たちのせいにされるのを恐れたのだった。そして彼らはトムを陥れるために、羊飼いの少年を射殺する。それはライフルで実行され、トムの持っているものと同じ型だった。

 トムに疑いがかけられる。保安官ジョーはトムを事務所に呼び出し、少年殺しのことを聞く。ジョーはトムの言葉を記録させていた。トムは少年殺しの容疑で逮捕されることに。牢でトムはグレンドリンとの会話を思い出していた。

 トムの裁判が始まる。ジョーが記録させたトムの言葉を悪用され、証拠とされてしまうが、トムは裁判そのものが気に入らずその旨を話す。判事はトムに自分が置かれている状況を説明してやって欲しいと話す。翌朝トムは顔見知りの保安官を騙し、牢から脱獄する。しかし街から走って逃げただけのトムはあっさりと捕まってしまう。

 再び裁判が開かれ、トムは有罪となり絞首刑にされることに。トムは絞首刑を待つ間、グレンドリンとの時間を思い出していた。彼女はトムの世界にハマるのが怖いと言って彼の元を去っていたのだった。大勢が見守る中、トムは絞首刑に処せられる。刑が執行されたのち、彼の手から落ちたのは彼が大事にしていた先住民のお守りだった。

 

 マックィーンの映画はこのブログを始めて7本目?。意外に少ないことに驚く。

 1980年の西部劇ということで、これまた一筋縄で行くストーリーではない。劇中で話されるように、田舎者のカーボーイでもスーツを着ているような時代。つまり西部劇で描かれた時代の終わり頃ということであるのが一点。さらにアパッチ退治をした英雄が無実の罪で処刑されてしまうという理不尽さがもう一点。西部劇といえばヒロインとの恋愛が売り物だが、その相手にも去られてしまっているというのが最後の一点か。

 やり切れなさが残る一本だったが、鑑賞後にネットでマックィーンの遺作に近い作品だと知り納得。「ハンター」が事実上の遺作のようだが、こちらの作品の方が、本人が病魔に侵されている状態で撮影されたらしい。時代遅れのガンマンだったり、ラストの絞首刑を他人事のようにとらえていたり、とマックィーン本人がこの作品を選んだ理由がかいま見えるよう。さらにこの話が実話を基にしているというのも効いている。

 死の恐怖や病魔との戦いを前に、最後まで自由を願ったマックィーンの気持ちが見えてくる。