夫婦 山本周五郎テーマ・コレクション 山本周五郎

●夫婦 山本周五郎テーマ・コレクション 山本周五郎

 山本周五郎の小説の中から、「夫婦」をテーマにしたものを縄田一男氏が選んだ短編集。以下の7編からなる。

 

「おれの女房」

 平野又五郎は売れない絵師で酒ばかり飲んでいた。ある日妻のお石は又五郎が描きかけの絵を5両で売ってしまう。そのことが元で喧嘩となりお石は家を出て行く。又五郎は絵を買った男のところへ行き絵を取り戻そうとするが、男は金を出すので又五郎にもっと大きな絵を描くように勧める。又五郎は3年姿を消し戻ってくる。彼の描いた絵は売れ、召しかかえられることに。彼を祝う場が設けられそこにお石が姿を現す。周りの皆はお石を非難するが、又五郎が話したことは…

 

「寒橋」

 お孝は時三と仲の良い夫婦だった。ある日父が倒れ女中のおたみが世話をすることに。やがて父の病気は治るがおたみは家を出て行ってしまう。ある時お孝は友人からおたみが時三の子を宿したから出て行ったのだと聞かされる。悩むお孝だったが、父がまた倒れてしまう。その父が最期の床でお孝におたみの子は自分の子供だと話しお孝を安心させる。それを聞いた時三は父に泣きながら感謝する。

 

「四日のあやめ」

 千世は早朝、夫である五大主税介への客深松と対面する。彼はこれから仲間同士の斬り合いがあるのでとその場所を主税介に伝えて欲しいと言って去る。千世は夫の身を心配しそのことを伝えなかった。斬り合いの場に現れなかったことで主税介は仲間から避難を浴びる。千世は夫に詫びるが夫は冷たかった。ある日千世の兄重三郎が主税介を非難しにやってくる。千世は本当のことを兄に話す。兄は怒り千世を連れて帰ろうとするが、それを主税介が止め千世をかばう。

 

「妻の中の女」

 ある時江戸家老信夫杏所が突然国許へ帰ってくる。彼は御用金調達のため約束を違え新田に課税することを提案するが、若い勘定奉行泰二郎に猛反対を受ける。怒った杏所は配下の者に泰二郎を斬るように命じるが、杏所の妻初世がそれを止める。泰二郎は初世が産んだ子供だったのだった。それを知った杏所の取った行動は…

 

「水たたき」

 辰造は料理屋「よし村」の主人だった。辰造は店の裏の長屋に住む角田という浪人と仲良くなる。ある日辰造は角田に妻おうらについて話し出す。辰造はおうらに浮気をしても良いと話していたが、ある日店の板前で暖簾分けした徳次郎の店へ行ったままおうらは姿を消してしまったのだった。角田は辰造に徳次郎の店へ行くように勧めるが…

 

「並木河岸」

 鉄次の妻おていが3度目の流産をしてしまう。鉄次はやりきれない思いを抱えたまま飲んだくれてしまう。ある時飲み屋の女中お梶が鉄次の幼少の頃を知っていることに気づく。鉄次はお梶に惹かれて行く。ある日お梶の誘いで二人で遠出をすることにした鉄次だったが、約束の日、並木河岸でおていがいることに気づく。そこは二人が一緒になる前によく待ち合わせをした場所だった。


古今集巻之五」

 永井主計が参勤の共として江戸へ立つことなった。岡本はその祝宴を催すが、その晩永井の妻杉江が自殺してしまう。杉江の自殺の理由がわからずそれ以来永井は性格が変わってしまう。江戸に行った永井のことが心配な岡本は自殺の理由を探る。そして子供を欲しがっていた杉江が実は妊娠しており、その相手が杉江の幼なじみだったことを突き止める。真相を知った永井は…

 

 現在NHKBSで山本周五郎の短編を原作としたドラマが連夜放送されている。これはシーズン2であり、数年前にはテレ東が同じくドラマシリーズを製作していた。どちらも観ていて感動したので小説を読んでみることに。

 上記にあらすじを数行で書いたが、実際にはどの短編ももっと複雑なストーリーであり、夫婦に起きる悲劇が題材となっている。どの話も圧巻な結末であり感動させてくれる。これらの話がもう70年も前に書かれていることにも驚く。

 

 山本周五郎、しばらく読んでいきたいと思う。